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2022/2/12 20:46


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日本の安全保障を所管する防衛省  =東京都新宿区

防衛省が、自国に有利な情報を流すことで他国との紛争を有利に進める「情報戦」への体制整備を進めている。来年度予算案に担当の「グローバル戦略情報官(仮称)」を新設する関連経費を計上。2014年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合した際に行われた情報戦を念頭に、日本を対象とした攻撃≠ノ備える。合わせて、SNSの発信を中国語でも行うなど、情報発信も強化している。

14年のクリミア併合は親ロシア武装勢力などが動き、住民投票でロシア帰属派が多数を占める結果となったことが後押ししたとされる。

米ランド研究所が17年に発表した報告書は、ロシア側が「クリミアは歴史的にロシアに帰属する」「ウクライナの親ヨーロッパ派はナチスの支持者だ」「米国が騒乱を引き起こしている」−などといった情報を流布したと分析した。

情報戦やサイバー攻撃などを組み合わせて戦略目標を達成する手法は「ハイブリッド戦争」と呼ばれる。中国も03年以降、「世論戦・心理戦・法律戦」を駆使する「三戦」を掲げており、台湾有事や南西諸島での力による現状変更に合わせ、情報戦を仕掛ける可能性もある。

そこで防衛省は、北朝鮮のミサイル発射などの情報収集を担当している防衛政策局調査課にグローバル戦略情報官を新設。各国政府やメディアの情報、SNS上で飛び交う偽情報(フェイクニュース)なども含め、軍事的な動きとの関連などを調査・分析する。

一方、昨年からは米欧との防衛協力や共同訓練の実施などをツイッターなどSNSで発信する際、一部で中国語や韓国語も使用している。

小泉悠東大先端科学技術研究センター専任講師は情報戦について「クリミアはもともとロシア系住民が多いので成功した」としつつ、「日本への意図的な攻撃がゼロとも言い切れない。情報空間の監視機能の強化はもちろん、複数機関で情報を共有する場も必要だ」と指摘している。(市岡豊大)