住宅情報サイト「SUUMO」を運営するリクルートが三日に発表した「住みたい街ランキング2022」(首都圏版、駅別)で、四年連続三位だった「吉祥寺」(武蔵野市)が二位に浮上した。一方、新型コロナの影響で「恵比寿」(渋谷区)や「目黒」(品川区)「品川」(港区)「表参道」(同)といった都心部の人の多い駅のエリアが順位を下げた。首位は五年連続で「横浜」(神奈川県)だった。(花井勝規)

 「吉祥寺はコロナ禍に強い」。吉祥寺の駅前商店街で貸しビル業を営む男性(56)がランクアップにこう話した。コロナ禍以降、都心部で多店舗展開してきた飲食業者が吉祥寺の空き店舗に出店する動きが目立つという。
 カギは駅前の南北に集積する大型商業施設を含めた商店街と、隣接する大きな住宅街の存在だ。駅からやや離れた東急百貨店裏の「東急裏」と呼ばれるエリアには、人気アパレルショップや飲食店が数多くありトレンド発信スポットともなっている。午前中から人の列ができる飲食店もある。
 吉祥寺はかつてランキングトップの常連だった。一〇年の調査開始以来、震災のあった一一年を除き、一五年まで五回連続首位。一六年は二位で一七年に首位へと返り咲いた。調査手法が変わった一八年から三位となっていた。
 SUUMOの池本洋一編集長(49)は「かつての憧れの街の吉祥寺は若者、特に二十代からの支持の低さが課題だった。最近は若者向きの店がそろい、街に多様性が出てきた」と指摘する。二十三区在住者は断トツで吉祥寺を選んでいると言い「コロナ禍で生活スタイルが変わり、郊外に目が向いた証左では」。街歩きや緑豊かな環境が注目され「駅の南側に広がる井の頭公園を含めた街の回遊性が再評価されているのでは」と分析している。
 調査は一月にインターネットで実施。東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城に住む二十?四十九歳の男女一万人から回答を得た。
◆埼玉、千葉県勢 躍進
 ランキングで都内以外の地域を見ると、埼玉と千葉の躍進が目立つ。昨年四位の「大宮」(埼玉県)は三位、八位の「浦和」(同)は五位、二十二位の「船橋」(千葉県)は十五位、三十九位の「流山おおたかの森」(同)は十六位に、それぞれランクを上げ、千葉県勢も気を吐いた。
 池本編集長は、これまでは都内の駅への投票が多かった千葉県在住者が県内の駅に投票する「地元回帰」の傾向や、都内在住者が都内の駅を選ぶ率が低下する傾向があると説明する。「川越」(埼玉県)「江ノ島」(神奈川県)などが昨年から大きく順位を上げたことに触れ「遠出は避け、身近な観光地への関心が高まっている」とも話した。

東京新聞 2022年3月4日 07時11分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/163553