サンケイスポーツ
西前頭9枚目阿炎(28)が12勝3敗で初優勝を果たした。単独首位だった平幕高安(32)を本割で突き倒し、平成6年春場所以来28年ぶりとなった三つ巴(どもえ)の優勝決定戦で大関貴景勝(26)、高安に連勝した。一年納めの場所を終え、今年は6場所全て異なる力士が優勝。年6場所制となった昭和33年以降で3度目(5場所開催の令和2年を除く)となった。
情に報い、恩返しをするときがきた。阿炎が28年ぶりとなる三つ巴の優勝決定戦を制し、優勝制度が確立した明治42年以降初の3場所連続となる平幕優勝で一年納めの場所を締めくくった。
「うそのような感じで、まだ高ぶっています」
本割で2敗の高安を突き倒し、3敗に引きずり下ろして貴景勝を含む巴戦へ。くじで最初の一番を引き高安、貴景勝に2連勝して賜杯を抱いた。3人による巴戦は7度目だが、平幕力士が制したのは初めてだ。
今場所、師匠の錣山親方(59)=元関脇寺尾=は不整脈などで休場。現在も入院中だ。場所中、師匠からは打ち出し後にメールが届く。前日は「(千秋楽では)気合の入った相撲を見せてくれ」とはっぱをかけられ、「迷惑をかけたので少しは喜んでくれるかな…」と涙を拭った。
阿炎はSNS(交流サイト)の不適切な投稿などで2度、日本相撲協会から厳重注意を受けた。コロナ禍の令和2年名古屋場所中には協会のガイドラインに違反してキャバクラへ出入りしたことが発覚。3場所出場停止などの懲戒処分を受け、引退届まで提出したが、協会は受理せず幕下まで転落して復帰した。
最大限の温情を見せた協会はこのとき「今後、協会に迷惑をかける行為を行った場合は引退届を受理する」と一筆取った。関係者によれば「優勝しようが番付を上げようが、無効にはならない」という。
〝負の証文〟は消えないが、阿炎は「こういう結果を出せたことが一番の成長です」と自身を顧みた。8月に第2児の女児が誕生し「ずっと見ていてくれたので、家族と早く会いたい」。改悛(かいしゅん)の情の人情噺。男を上げた。(奥村展也)
■阿炎 政虎(あび・まさとら) 本名・堀切洸助。平成6(1994)年5月4日生まれ、28歳。埼玉・越谷市出身。9歳から相撲を始め、千葉・流山南高から錣山部屋に入門。平成25年夏場所初土俵。27年春場所新十両。30年初場所新入幕。新型コロナウイルス対策のガイドライン違反で、令和2年秋場所から3場所出場停止処分。幕内通算173勝134敗(23場所)。生涯通算357勝239敗(57場所)。最高位は西関脇。優勝1回。殊勲賞1回、敢闘賞4回。金星3個。得意は突き、押し。187センチ、151キロ。
ソース https://news.yahoo.co.jp/articles/c0d00312e187bdb35aae642b23f033ed9a4f7510