地下40メートル以深の大深度地下を掘るリニア中央新幹線のトンネル掘削場所に近い東京都町田市の民家の庭で10月22日、地下から水と気泡がわき出たため、この工区のシールドマシン(掘削機)による工事を同日以降に中断していることが、JR東海への取材で分かった。同社が工事との因果関係を調べている。(梅野光春、中川紘希)

◆JR社員が現地で水と気泡を確認
 大深度地下の工事では2020年10月、東京外郭環状道路(外環道)ルート上の調布市で陥没が発生。これを受けてJR東海はリニア工事の地表への影響を調べる「調査掘進」を実施する中での中断となった。
 JR東海によると10月22日、第1首都圏トンネル小野路工区(町田市など)で調査掘進中の共同企業体(JV)を通じ、住民から「庭で水が出ている」との連絡があり、JR社員が現地で水と気泡が出ているのを確認した。掘削機は土を掘りやすくするために地中に気泡剤を放出しており、関係を調べるため掘進を中断。水と、地面から50センチ上の気体を採取した。
 採取した水の気泡剤に含まれる界面活性剤の成分を同社が調べたところ、飲料基準未満の検出にとどまった。庭から出ていた水や気泡は現在、止まっている。
 第1首都圏トンネルは品川駅(港区)と神奈川県駅(仮称、相模原市)を結ぶ37キロ。小野路工区を含め4工区に分け、それぞれ調査掘進を実施。同工区は23年7月に掘進を始め、小野路非常口を出発点に予定した約350メートルのうち247メートル、地下45メートルのところまで掘削機が進んでいた。
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◆調布の陥没前にも付近で気泡が
 リニア中央新幹線第1首都圏トンネル小野路工区(東京都町田市など)の調査掘進ルートに近い住宅地に水と気泡が現れた問題。工事は中断されたが、地域に不安が広がる。専門家はJR東海に住民への丁寧な説明を求める。
 「ボコボコ」。土に覆われた住宅の庭で、無数の気泡と水が音を立て噴き出し続ける。この現象は10月22日朝に始まり、24日昼まで続いたという。掘削地点から数十メートルの現地を確認した市民団体「リニア中央新幹線を考える町田の会」事務局の奥村憲雄さん(77)は「調布の陥没のような大事故の前触れでは」と懸念する。
◆「JR東海は住民に説明を」
 調布市の東京外郭環状道路(外環道)の工事に伴う2020年の陥没の前にも、付近の川では気泡が確認された。
 地盤工学が専門の日本大理工学部の鎌尾彰司准教授は気泡について「工事が原因である可能性が高い」とみる。「掘削機からの過剰な圧縮空気が地下水と一緒に地表に漏れ出た可能性がある」と話し、現場周辺に、水と空気を通しやすい砂の層が多いことも要因と指摘する。
 一方、鎌尾氏は地盤沈下が起きた外環道の現場と地層の条件が異なる小野路工区では、大規模な陥没リスクは小さいとみる。ただ、「大深度地下の工事が地上に影響することが、調布に続き明らかになった。JR東海は住民に状況を説明すべきだ」と指摘する。
◆「酸欠空気」の不安も(略)
 リニアのトンネル(略)

東京新聞 2024年11月7日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/365231