小林よしのり(聞き手・石井紀代美)
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中日新聞 2016年8月7日 朝刊
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016080702000062.html

◆「女性天皇」一緒に議論を

 現在の皇室典範には退位についての規定がありませんから、
天皇陛下のご意向をかなえるためには典範の改正が必要になります。
退位についてご自身で決めることすらできず、
ご意向を示しただけで政治的発言ととらえられ、「憲法違反」と批判する人もいる。
これ自体、とても異常なことです。
典範にはもろもろの不備があり、改正の必要性は指摘されてきましたが、
政治家はどうしても手をつけませんでした。わしに言わせれば政治の怠慢ですよ。

 今の皇太子さまは、すでに天皇陛下が即位した年齢を超えています。
陛下ご自身が、日本の象徴としての天皇像をつくるためにかけたのと同じ時間を、
皇太子さまに与えたいと思われるのは自然なことです。

 典範には天皇の長男を皇太子とする規定があり、
天皇陛下が退位し皇太子さまが即位されると、次の皇太子が空位になります。
皇位継承順位が一位となる秋篠宮さまは「天皇の子」ではないからです。

 「皇太弟にすれば良い」という人もいますが、
秋篠宮さまは皇太子さまと五、六歳しか離れていない。
ともに高齢になっていき、極短期間での御代替わりになる可能性だってある。
このままでは次世代に祭祀(さいし)も引き継げなくなります。

 典範では、男系男子しか皇位継承が認められていません。
皇太子ご夫妻に長女愛子さまがいらっしゃるのに、
女だから皇太子にはなれないなんて変ではありませんか。
わしは愛子さまが皇太子になるのが最も自然で良いと思います。

 世界を見れば、英国のエリザベス女王にメイ首相、
米国ではクリントン大統領候補、ドイツもメルケル首相と、
女性が活躍している時代です。
「男性の血脈こそが尊い」というばかばかしい男尊女卑の因習は、
いいかげんやめるべきです。

 次の天皇になる皇太子に愛子さまがなられた段階で、
日本はこれまでとまったく違う地平が開けると思いますよ。
天皇は日本の象徴ですから、世界中に「女性の時代」をアピールできる。
日本も「女性活躍社会」と言うなら、女性・女系天皇も認めるべきです。

 このまま男系男子しか認めなかったらどうなるか。
男系に固執する一部勢力は「秋篠宮家の長男悠仁さまがいる」と言いますが、
皇室に残る次世代の男子は悠仁さまお一人だけで、
もし悠仁さまに男子が生まれてこなければ、そこで皇統断絶です。
圧力が相当かかるでしょう。そんな環境に嫁いでくる女性がいるでしょうか。

 女性宮家の問題も早く決着をつけなければいけません。
現行制度では、女性皇族は民間人の男性と結婚したら皇族を離れます。
しかし、女性宮家が認められると、結婚した男性を皇族に招き入れることになります。
結婚適齢期を迎える眞子さま、佳子さまのためにも、早く決めるべきです。
いつまでも自分の将来がわからないなんて酷ですよ。

 生前退位だけでなく、女子への皇位継承、女性宮家の創設も一緒に考えるべきです。