>>380       続く
佐賀駅を、愛猫「ちょん」と共に出発して、大牟田駅に着いたのは良いが、そこのホームで
猛獣に戻ってしまい、僕仰天させた事などはここを参照を。以下の板の、ほぼ全体にわたり書き込みました。
HiFi-SSBアンチスレ [無断転載禁止](c)2ch.net
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/radio/1462443341/

昭和30年代の中ごろ、昭和さんじゅうX年、X月X日のある日、私は三池炭鉱で有名な
三池炭田の中心地、大牟田市の大牟田駅の灰色のプラットホームに立っていた。
人の群れの絶えない停車場には、蒸気機関車が躍動し、蒸気と黒煙と白煙とブラストの騒音
と世界最大の大動輪を止めんと、必死のブレーキ音のC57で騒然となっている。
おっと、これはまずい、悪い予感が、左から蒸気が1台進入してくる。急行列車だ、
先頭に立つは、あの九州の化け物蒸気、おそろしい突貫小僧の精悍重厚のC59旅客パシフィックだ。

悪い予感のその通りの事がおきてしまった。恐るべき突貫小僧は、駅の出口で改札を待つ
私ら乗客に向けて、真横に白い蒸気を吐きながら、突進してきて、シューという吐き出し音。
わが黒猫は、この音、シューを他の猛獣の威嚇音として聴いて、最後のの渾身の力を振り絞り
私ののど元の隙間をねらって飛び出しを計った、にゃーあごおおお、と小さな猛獣の叫び。

そうは、させるかお前は俺のネコだ、級友はみな居ない、すべて行橋市や八幡市に置き去りに
してきた,友は居ない、お前が友だと、私も負けじと下から上に突き上げて、脱出をはかる猛獣
を顎でもって押さえつけ、両手でもって押さえつける。

瞬間、不吉な予感が襲う、たいへんだぞ、これはこの黒い小さな猛獣は、本気をだしてきたぞっ
たいへんだ、これは
この黒のビロードの悪魔は、人間の手を離れると、とたんに町中を戦闘機のように飛び回るのだっ。
路の端、屋根の上、塀の上を飛んでいくのだ、ここでこの駅のホームに飛び出すと、線路沿いにすっ飛んで
行って、あっというまに行方不明だぞ・・・

友人を失いたくないとの思いの、私が勝ち、黒猫の押さえ込みに成功した
私、小学校4年生だったか、は大牟田駅の改札を、私は猫など持ってませんと
いう顔で通り抜け、駅からかなりの距離のあった、荒尾四山方面向けのバスに乗って
まだ見ぬ次のオンボロ長屋が、どのようにボロボロだろうかと空想しながら
その西鉄バスの乗客となった。夕方だったろうか、バス停のすぐ前にあった
地元大牟田から少し離れた、瀬高の銘酒、「園の蝶」の大きなネオンサインだけが、
大牟田市の街の夕やみのなかに燦然と輝いていた。その色彩の美しさ。

目的地の長屋はやはり、ボロ長屋だった。父は次の任地の借家を決めるのに
必ず、飲みに行ったバーのママさんの紹介、ただ一件で決め手しまうので。
家賃の割にはボロ長屋になるのだった。大牟田のその新居に初めて到着した私が、お茶を飲み、
ジャンパーと下着をはぐってみると、黒猫の暴れまわったあとが傷として残っていたのであった。
が、しかし大牟田駅でネコが逃げ出さなかったから、少年の私はそれだけで大満足したのである。