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 例えば、羽生が国別対抗戦のフリーの最後に跳んだ3回転アクセルは、

「高さ、スピード、ジャンプの入り方など、どれを見ても完璧でした。しかし、GOEは3か4止まり。満点の5をつけたジャッジは1人もいませんでした。これにはさすがに驚きましたね」(前出・フィギュアスケート関係者)

 スポーツジャーナリストの折山淑美さんが指摘する。

「ジャンプ前のつなぎ方によってもジャンプの難易度は変わります。GOEに関しては、直前まで演技をつないで跳ぶ羽生選手のようなジャンプと、構えて静止状態から跳ぶ選手では、もっと差があってもいいと思うことがありました」
“黒幕”はかつての金メダルメーカーか

 羽生は2020年、早稲田大学人間科学部通信教育課程を卒業したが、その卒業論文は学術誌にも掲載された。そのなかで彼は、フィギュアスケートの採点制度が《その試合の審判員の裁量に委ねられている部分が大きい》と指摘。さらに自らの手首やひじの関節など最大32か所にセンサーをつけ、ジャンプなどの動きをデジタルデータ化する研究を行った結果、AIによって《ジャンプに関してだけでなく、ステップやスピンなどの技術的な判定は完全に(デジタル化)できるように感じた》と記している。

 羽生がこうした研究に取り組んだのは、言うまでもなく、審判員の“主観”に頼らない公正なジャッジのあり方を追求するため。そこには後輩たちに“不公平のない未来”を描いてあげたいという思いも込められていた。

「ISUは羽生選手が最初の金メダルを獲得した2014年のソチ五輪の後にもルール改正を行い、名前をコールされてからスタート位置に着くまでの時間を、それまでの60秒以内から30秒以内に短縮しました。羽生選手はルーティンを行ってきっちり46秒かけていたので、新ルールを聞いた瞬間、絶句したそうです。

 さらに2017〜2018年シーズンまで『15点』だった4回転アクセルの基礎点が、羽生選手が挑戦を公言し始めた2020年になぜか2.5点も減点された。いずれも“王者へのいやがらせでは”と囁かれました」(前出・フィギュアスケート関係者)