>>390
 採点ルールがとりわけ大きな議論を呼んだのが、2010年のバンクーバー五輪だ。浅田真央(31才)は当時、五輪の舞台では1992年に伊藤みどりしか成功させたことのなかった難易度の高いトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をショートとフリー合わせて3度も成功させたが、トリプルアクセルを決めなかったライバルのキム・ヨナ(31才)に約23点差で敗れ、銀メダルに終わった。その得点差に疑問を抱いた日本のファンも多かった。

 浅田は直後のインタビューで、トリプルアクセルのポイントが、この採点システムで低すぎるのではないかという意見について聞かれると、こう答えた。

「採点については、何も言えません。でもこの五輪という舞台で、トリプルアクセルを3回成功させたことは、誇りに思っています」

 このバンクーバー五輪では男子の採点に関しても論争が巻き起こった。4回転ジャンプを跳んだロシアのエフゲニー・プルシェンコ(39才)が敗れ、3回転以下のジャンプのみに抑え、確実な演技をしたアメリカのエヴァン・ライサチェク(36才)が金メダルを獲得したのだ。

「これは『4回転論争』と呼ばれました。五輪後は、ルールが大きく改正されるタイミングで、この年はこうした疑問を受けて、バンクーバー五輪後に大きな採点基準の改正が行われ、翌シーズンから4回転ジャンプやトリプルアクセルの基礎点が上がりました」(スケート連盟関係者)

 このときは、4回転ジャンプに挑みやすいルール改正も行われた。それまでは「4分の1回転」以上回転が不足していると、1回転少ないジャンプの扱いになっていた。例えば4回転ジャンプの回転不足では、3回転ジャンプの基礎点しかもらえなかったが、改正後は「4分の1回転以上、2分の1回転未満」の回転不足の場合は、4回転ジャンプの基礎点のうちの7割を与えられるようになったのだ。

「これによって、各選手が4回転ジャンプやトリプルアクセルに挑戦しやすくなったといえます」(前出・フィギュアスケート関係者)

 羽生が連覇を決めた2018年の平昌五輪後にも、大きな採点ルールの変更があった。技の「出来栄え点(GOE)」の幅が広がり、プラスマイナス3の7段階から、プラスマイナス5の11段階に拡大され、同じジャンプでも出来栄え点で大きな差がつくようになった。また、男子のフリーの演技時間が4分30秒から4分に短縮された。