>>528
階段を虹色の陽炎が立ち昇っていた。

「ラーメンでいいか」
「何でもいい」
「家にラーメンしか無いんだ」
「じゃあ、それで」
既にマットレスの上に陣取って横になったマークが答えた。

毎日これしか食べていないので、ラーメンを沸かすことには自信があった。

湯気がゆらゆらと立ち上るラーメンの上に、卵黄二つがフワフワと仲良く浮遊している。

「おお、美味しそうだけど」

キムチもたくあんも無いのに、彼は舌鼓を打った。

僕達は21インチのテレビと小さなお膳を挟んで、何も言わずにただラーメンだけを食べた。

中学時代からマークは事実、ラーメンが好きな方では無かった。
それでも、彼はよく食べた。スープまで飲み干して。
ブリキ鍋はすぐに底を現した。

テレビは、暫く芸能プロの時間だった。
僕達はマットレスの上に並んで座り、昔一緒に見た記憶があるお笑い番組でチャンネルを止めた。
正直全くつまらなかったが、時折笑ったふりをし、マークは僕が笑うのに合わせて笑う。

無意味な時間が継続して流れていた。

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