津市立の小学校で教頭を務める男性(59)が少なくとも8人の女性と不倫関係にあったとされる問題。教育現場からの「更迭」を求める市民らの署名は900人近くに増えたが、教頭は病気休暇を取得したまま、今も学校に所属している。発覚から半年がたとうとする中で、三重県教委が処分に踏み切る気配はない。

 民事訴訟の判決などによると、教頭は令和元年までの16年間、8人の女性らと不倫関係にあった。不倫相手の約半数は教職員。教頭は訴訟で不倫を否定したが、判決は不倫を事実と認定した。

 本紙が昨年10月に報じて以降、この話題はネットニュースなどを通じて全国に拡大。一部週刊誌も取り上げた。社会的批判は高まるばかりだが、教職員への処分を担う県教委に動きはない。

 県教委は昨年12月、教頭が勤務する学校に別の教頭を加えて「2人体制」にする人事異動を出した。ただ、これもあくまで教頭が病気休暇を取得していることに伴う措置で、処分ではない。

 そんな中で、教頭の配置転換を求める市民らの署名運動は拡大。関係者によると、市教委に署名の提出を始めた昨年9月の段階では242人分だったが、現在は883人分に上る。

 ただ、署名運動を展開する男性は「県教委や市教委は何もしていない。不倫をしても問題ないと言っているのと同じ」と指摘。「処分をして教頭に自分の行いを認識させるべきだ」と訴える。

 なぜ、県教委は処分をしないのか。福永和伸教育長は先月21日の定例記者会見で「法律に違反していないプライベート上の事案なので、懲戒処分をする対象には当たらない」と説明した。

 関係者からは「教頭が早期退職するのでは」との観測も漂う。そうなれば処分はできず、退職金も支払われる。教職員課は異動や退職の予定について「人事に関わる」として回答を避けた。