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真剣のリアル
いまの時代、刀剣を所有するには許可を取る必要があり、真剣をじっくり見たことがあるという人は少ないでしょう。「真剣のリアル」は、いろいろと忘れられつつあります。

今回は、一本の真剣で何人まで斬ることができたのか? そして、真剣に「溝」が彫ってある理由は何なのか? を解説します。

江戸時代の武士には、腰の刀を抜こうと思ったら、鞘に引っかかって動かず、やっと抜けても刀身が赤く錆びていたという者もいたようです。

天下太平の時代になれば、武士の命といわれた日本刀も使う機会がなく、使わないから手入れもされません。台所の包丁と同じで、手入れをしないと、鉄製の刀身はすぐに赤錆だらけになってしまうのです。

しかし幕末になると、再び人の斬り合いが始まります。その頃を舞台とした時代劇には、新撰組や浪士がバッタバッタと敵を斬り殺すシーンが登場しますね。

では、一本の日本刀でいったい何人の人を連続で斬ることができたのでしょうか。

実戦での限界
例えば、首斬り役人を任されていた山田浅右衛門は、一本の日本刀で何人ぐらい斬れるかという数字を残しています。

その記録によると、長船秀光や関の孫六長曾祢虎徹をはじめとする最上級の刀で13人となっています。

しかし、これはあくまで試し斬りの話。実戦では、そんなに続けて斬ることは不可能だといいます。

せいぜい三人も斬ると、刀身に脂身がべっとりとつきますし、また刃こぼれもします。一本の日本刀で連続で斬れるのは、3~5人が限界だったといわれています。

時代劇では、何人もの相手を斬り倒した後も刀がピカピカに光っていたりしますが、あれはあくまでもフィクションです。

日本刀の「溝」の謎
さて、次に日本刀に「溝」が彫られている理由についてです。

本物の日本刀には、根元から切先にかけて細い溝が彫り込まれています。溝を彫れば、その分だけ強度は弱るはずですが、それでも溝を彫ったのは、刀を少しでも軽くするためでした。

刀はもともと鉄の塊であり、非常に重いものです。普通の刀で重さは約一・五キロ。プロ野球で使うバットが一キロ弱なので、バットよりも五割以上も重いことになります。

じっさい、プロ野球界のレジェンド王貞治は、現役時代に真剣で素振りをしたり、天井から吊した紙を切ったりしたものの、初めて真剣を振った翌朝は両腕がパンパンに張ったといいます。

かように、真剣を振るうというのは大変な力がいることなのです。

そのうえ、実戦では短い刀よりも長い刀のほうが有利です。さらに、斬り合っても刀が折れないようにしようと思うと、ある程度の厚みも必要になります。

そこで、重い刀を少しでも軽くしようと、刀身の一番分厚い部分を削り取り、溝をつけたわけです。

なお、その技術は現代にも生かされ、出刃包丁も少しでも軽く感じさせるために溝を彫ったものがあります。

参考資料:歴史の謎研究会『舞台裏から歴史を読む雑学で日本全史』2022年、株式会社青春出版社画像:photoAC

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