未婚でも出生率1.10でも問題ない個人単位の社会保障制度
シンガポールの【個人積立方式年金・医療制度CPF】

シンガポールの年金・医療制度には、日本の世代間仕送り「賦課方式」ではなく、受給者自身が現役時代に納めた保険料を基本にする「積立方式」が採用されている

ただし積立方式の場合、現役時代の所得が低く、保険料を十分積み立てられなかった人はほとんど受給できず、【自己責任】として老後格差がさらに大きくなる
さらにシンガポールでは退職後20年を想定した年金制度設計のため、それ以上長生きすれば個人の積立金が枯渇することもありえる

シンガポールの一つの特徴は、「自助努力」(自分の面倒は自分でみるべき)が強調されながらも、年金など社会保障に国家が責任を持っていることだ

シンガポールでは、雇用主と雇用者のいずれも加入が義務付けられている中央積立基金(CPF)のもとに社会保障が一括管理されている。ここに個人口座が設けられていて、加入者は保険料を積み立てる。この制度により、55歳以下の人は給与の20%を、政府の管理下にある個人の口座に強制貯蓄している。加えて、雇用者が給与の17%を拠出することになっているので、合計で給与の37%が毎月強制貯蓄される

貯めたお金は住宅取得や医療費などとして使うこともあるので、これだけで老後の生活を支えるのは困難だ
そのため、多くの人がCPFとは別に給与の15〜20%程度を老後資金のために積み立てたり、運用している

CPFは個人事業主は強制加入とはならないため(自主的に加入することは可能)、CPFに加入しない場合には、老後資金を自主的に貯金したり、医療保険に個人的に加入する必要がある

個人積立方式とは成果主義のことであり、社会的弱者や寿命の長い女性にとっては不利な制度だ(日本の女性の年収中央値は男性の8割程度)

日本の年金や医療は賦課方式であり、そのときの現役世代がそのときの高齢者を支える制度だ
(先進国は、インフレなども勘案して賦課方式の方が多い)

年金や医療を個人の積立制度にした場合、社会保険料による「所得の再分配が行われなくなる」ので、ますます貧富の差が広がる

そのため、個人の積立方式であるシンガポールは、収入や資産によって受けられる医療内容や介護も違う(自己責任)

(追記)
都市国家シンガポールは国家予算の約15%が教育関連費。医療費の自己負担は約6割
個人所得税や法人税の税率は日本に比べると低い(シンガポールの場合、積立金に対して政府保証の利回り2.5%がある)