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毎日新聞 2022/1/5 19:40(最終更新 1/5 19:40) 1038文字




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クラスターの発生が判明した米海軍横須賀基地=神奈川県横須賀市で2020年9月23日午後4時28分、高田奈実撮影

 各地の在日米軍基地で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が相次いで発生している。変異株「オミクロン株」も確認された沖縄県内の米軍基地に続き、神奈川県の米海軍横須賀基地でも年末にクラスター発生が判明している。こうした中、横須賀基地内で働く日本人従業員の男性が毎日新聞の取材に応じ、不安な胸の内を明かした。

 「いくら入国制限をしても穴の開いたバケツだ」。横須賀基地内で働く男性はこう語る。クラスターの懸念は発生前から従業員の間にあった。



 この男性によると、基地内では「この施設ではワクチン接種済みの方はマスク着用の義務はありません」と書かれた紙が貼られていた。5日にようやく着用指示が出たものの、それまではマスクをせずに出歩く米兵もいたという。男性は「日本政府がオミクロン株対策で水際対策を強化しても、いくらやったところで米軍が抜け穴になると思っていた」と語る。

 懸念は現実のものとなった。横須賀基地は2021年12月30日に、同23日以降で基地関係者75人の感染を確認したと発表した。そのうち大半が最近入国し、空港検疫で陽性を確認したという。ただし、横須賀基地側はオミクロン株に感染したかどうかは明らかにしていない。



 米軍側からクラスター発生に関する説明はなく、男性はこのことをニュースで初めて知った。クラスターが発生しても、外出制限は出ていないという。男性は「(基地関係者は)次から次に入国してくる。首都圏に近い横須賀でクラスターが発生したのに、あまり注目されていないのでは」と話し、危機感の薄さに疑問を呈する。

 横須賀市は12月30日、基地に感染拡大防止の徹底を申し入れ、神奈川県は同31日、外相と防衛相に対し、基地からの外出制限や基地内労働者の感染防止策を講じることを緊急要請した。一方で横須賀市の上地克明市長は4日の記者会見で、米軍基地のある他県で日本人従業員の感染や市中感染が出たことに関連して「横須賀では心配ない。(基地側と)この2年間連携し、完全に米軍の中で管理してもらうよう話し合いをしている」と述べた。



 横須賀市によると、米軍機が直接基地に入って米軍ルールで検疫をする沖縄県の基地対応とは異なり、横須賀基地の関係者の大半は民間機で入国するため、日本の空港検疫を通る必要がある。基地関係者は空港検疫後に米軍車両で基地に移動し、陽性者は基地内の病院で隔離されることを踏まえ、市の担当者は「徹底した対応が取られている」と強調している。【高田奈実、岩崎信道】