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2022/1/31 19:08


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会見に臨む松野博一官房長官=31日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

松野博一官房長官は31日の記者会見で、北朝鮮が1月30日に発射したミサイルについて「一方的に挑発の段階をエスカレートさせるような今般の発射は断じて許されるものではない」と非難した上で、敵基地攻撃能力を含む防衛力の抜本的強化に改めて意欲を示した。しかし、31日の衆院予算委員会では北朝鮮のミサイルや敵基地攻撃能力の保有をめぐる論戦は低調に終わった。

岸信夫防衛相は31日、防衛省で記者団に、北朝鮮が30日に発射したのは中距離弾道ミサイル(IRBM)級の「火星12」だったとの分析を示したうえで、最大射程は約5千キロメートルと説明した。30日のミサイルは通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射されたため、飛距離は約800キロメートルに抑えられていた。

岸氏はまた、北朝鮮の意図について「長射程の弾道ミサイルの実用化、関連技術や運用能力の向上を図る意図や、一方的に国際社会に対して挑発の段階をエスカレートさせる狙いがあることは明らかだ」とも指摘した。昨年1月の朝鮮労働党大会で大陸間弾道ミサイル(ICBM)配備が最優先課題とされたことなどに言及し、ICBMの発射に警戒する姿勢を示した。

日本にとっては、長射程のミサイルだけが脅威となるわけではない。外務省幹部は「複雑な軌道を描く短距離の極超音速ミサイルのほうが直接的な脅威になる」と語る。

ただ、北朝鮮は1回目の米朝首脳会談が行われた2018年以降、米韓合同軍事演習の縮小に応じる形で核実験や中長距離弾道ミサイル発射の自主的な「モラトリアム(一時停止)」を行ってきた。今回の発射は北朝鮮がモラトリアムを破棄する姿勢を示したともいえる。

それにもかかわらず、31日の衆院予算委で北朝鮮のミサイル発射は話題に上らなかった。敵基地攻撃能力について質問した立憲民主党の城井崇氏も北朝鮮のミサイルに言及しなかった。同日の集中審議のテーマが国土交通省の建設受注統計書き換え問題などだったとはいえ、30日に北朝鮮の対外政策転換を印象付けたミサイル発射は素通りされた。