「政府内で事実関係を把握できる記録が見当たらない」――。1923年9月1日の関東大震災後の混乱の中で、朝鮮半島出身者らが虐殺された事件について、松野博一官房長官が述べた言葉が波紋を呼んだ。事件に関する公的な記録があるからだ。実は松野氏も自民党が野党だったころ、公的記録を根拠に事件を認める発言をしていた。「記録が見当たらない」との政府の公式見解は一体いつ、なぜ生まれたのか。【金志尚】

 まず、問題の発言が出た経緯を振り返りたい。8月30日の記者会見で「朝鮮人虐殺を政府としてどう受け止め、何を反省点とするのか」を問われ、松野氏は答えた。「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります」

 記者は続けて尋ねた。「朝鮮人虐殺を巡って、事実そのものを否定する歴史修正主義的な言説が出回っている。政府として今おっしゃった以上に事実関係を調査したり、実態を明らかにしたりする考えはあるか」

 松野氏は最初の質問への答えを繰り返した。「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります」

 発言が報じられると、ネット交流サービス(SNS)などで批判の声が上がった。その根拠の一つが…(以下有料版で,残り2873文字)

毎日新聞 2023/9/25 06:00(最終更新 9/25 06:00) 有料記事 3411文字
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