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衆院選の「1票の格差」を巡り、東京高裁へ提訴に向かう(前列左から)久保利英明弁護士、升永英俊弁護士、伊藤真弁護士ら=東京都千代田区で2021年11月1日午後3時、吉田航太撮影

 「1票の格差」が最大2・08倍だった今回の衆院選は、投票価値の平等原則を定めた憲法に反するとして、升永英俊弁護士のグループが1日、全国14の高裁・高裁支部に選挙の無効を求めて一斉提訴した。4年前の前回選挙から区割りに変更はなく、格差は1・98倍から拡大した。2倍を超えた選挙区は29に上り、司法の判断が注目される。

 選挙区内の人口の多い都市部に比べて地方では当選に必要な票数は少なく、1票の価値に格差が生じる。総務省が1日に発表した当日有権者数では、最も少なかった鳥取1区(23万959人)を「1」とすると、最多の東京13区(48万247人)は2・08倍だった。北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、兵庫で2倍を超える選挙区があった。前回に続き全289選挙区の有権者が原告に名を連ねた。

 最高裁は2011年、最大格差が2・30倍だった09年8月の衆院選を「違憲状態」と判断。47都道府県にまず1議席ずつを割り振り、残りの議席を人口比例で分配する「1人別枠方式」が格差の原因とし、国会に改善を求めた。同方式は12年11月に廃止されたが、12年12月の選挙は2・43倍、14年12月は2・13倍と格差が2倍を超え、最高裁はいずれも「違憲状態」と判断した。

 国会は16年、人口比をより正確に反映できる「アダムズ方式」を20年国勢調査後に導入することを決定。導入までの措置として定数を「0増6減」した結果、17年10月の前回選挙は小選挙区制を導入した1996年以降、初めて2倍を下回った。最高裁は18年の判決で、07年判決以来の「合憲」判断を示した。

 今回の訴訟では、アダムズ方式での区割りが間に合わず、前回と同じ区割りで選挙を実施した点をどう評価するかがポイントとなる。提訴後に記者会見したグループの伊藤真弁護士は「アダムズ方式導入を決めた後は何もせず、今回の格差拡大を招いた。国会の怠慢は明らかだ」と批判した。【近松仁太郎】

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