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9日のマスコミ発表会では自慢の寿司を披露した

ワタミはこのたび創業37年ではじめて「すし事業」への参入を発表した。コロナ後の外食は焼肉とすしが圧倒的に好調だ。昨年の「焼肉の和民」に続き、9日に東京・錦糸町に「すしの和」をオープンさせた。

徹底的に意識したのは回転ずしだった。握り1貫、88円(税込み96円)この価格帯で、回転ずしよりいいネタを仕入れられるかがカギだったが、日本最大級の水産会社がワタミの株を持ち戦略的に「その時々のいちばんいいネタを、いちばん安く仕入れられる」体制が築けた。

当初は、回転ずしでの参入を考えていたが、視察を重ねるうち、利用客の滞在時間は40〜50分、食事に集中して帰ってしまう世界観が気になった。

私が求めていたのは、そうではなく「子供の学校の話」「母親の近所の話題」など、家族団欒(だんらん)のシーンを作っていきたかった。横浜・弘明寺に私が幼少の時家族で通う寿司屋があった。1貫120円程度で、ちゃんこ鍋も名物だった。家族の団欒の場で、その世界観が好きだった。効率を求める回転ずしではなく、こうした世界観にこだわると決めた。

発表会見では「和民」の創業時の写真を示した。2家族、サラリーマンのチーム、若者など5組のお客さまが写っている。この世界観がやはりワタミらしい。

「すしの和」は、大山どりの焼鳥や、鍋料理も提供する。ゆっくり和める空間を提供していく。回転ずしの市場が7200億円あるので、3回に1回は「和めるすし」を利用して頂ければ、勝算は大いにある。

コロナ後は「オフィス」「会社員」「宴会」などのキーワードは廃れ、「家族」「郊外」「住宅地」そして「目的来店」がカギになる。

社員には「アフターコロナは外食戦争だ」と告げた。従来通りの宴会需要や飲みニケーションへの認識は変化を遂げた。

すしも焼肉も競争が激しければ激しいほど、市場は大きくなっていく。かつての「和民」も、総合居酒屋が出そろったレッドオーシャンに繰り出し、「第2の居酒屋ブーム」を生むことができた。後発でも成功する方法は「お客さまを思う気持ち」と日々の「微調整」だ。

経営者人生、新しいことを始めるときはいつも「そう簡単にうまくいかない」と言われてきた。自身でも重々わかっている。しかし、新しい挑戦をはじめなければ、今の私もワタミもなかった。挑戦のはじまりに夢はしっかり記しておきたい。「すしの和」は5年で100店舗にする。 (ワタミ代表取締役会長兼社長、渡邉美樹)

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