https://www.47news.jp/view/public/photo/02042d6aaa6a99c00083a61aba2d8e3a/photo_280x210.jpg
「ニュー道後ミュージック」のステージで舞うかすみ玲さん(写真はすべて10月に松山市で撮影)
 共同通信の5人のカメラマンが、新型コロナの流行によって変わってしまった日常生活を描く連載企画の第2回。

   ×   ×   ×

 風俗業に分類されるため、コロナ禍でも政府の持続化給付金が支給されなかったストリップ劇場。温泉街にある四国最後の劇場は、観光客が激減したことで入場者がゼロに。「精神が崩壊しそう」。追い詰められた経営者を支えたのは、「今は仕方ない」と出番を待ち続けた踊り子、「心ひかれる」と通い続ける常連、そしてクラウドファンディングで支援をしたまだ見ぬ客たちだった。(写真と文・共同通信=武隈周防)

 ▽異色の劇場

 怪談をテーマに演目を繰り広げる「怪談ストリップ」に、アーティストが踊り子の体にペイントをほどこす「裸体アート」、バンドとの競演―。

 四国最後のストリップ劇場「ニュー道後ミュージック」の木村晃一朗(きむら・こういちろう)社長(57)は、経営を引き継いだ16年前から、「他と同じものはいらん」と異色の興行を打ち出し、ファン層を広げてきた。

 国の重要文化財「道後温泉本館」から徒歩約3分の、飲食店などが立ち並ぶ一角。木材で装飾が施された外観は、そこがカフェだと言われても納得しそうだ。年季が入った重い扉を開くと、劇場の中心にある円形のステージと、そこにつながる花道を座席がぐるりと囲む。女性客が増えたのを機にクラウドファンディング(以下CF)を募り、女性用トイレを新設。老朽化した外壁も修理した。

 その矢先、新型コロナウイルスが道後温泉にも影を落とし始めた。2020年2月から観光客はみるみる減り、感染拡大を受けて昨年4月と5月は休館。風俗業に分類されるストリップ劇場に、国の持続化給付金は支給されなかった。

 ▽つぶすわけにはいかん

 「今までもうかっていたならまだしも、ずっと赤字続きのところにコロナが上乗せですから。さすがにしんどいよね」。営業再開からひと月後の20年7月、取材に訪れた記者に木村さんはそう言って大きく息を吐いた。雨が激しく地面を打つ音が、建物の中にも響いていた。夕方の開演時刻が迫っていたが、客の姿はまだなかった。

 休業期間と重なる時期、CFに再び望みを託した。踊り子のギャラや劇場の維持費を捻出するためだ。SNS(会員制交流サイト)などで輪が広がり、261人から約520万円の寄付と応援の声が届いた。

 コロナが収まったら必ず行きます―。

 怪談ストリップぜひ見たいです―。

 「本当にありがたい。みんなきついはずなのに」。木村さんは感謝の言葉を繰り返すと、一転険しい表情を浮かべ、語気を強めた。「応援してくれる人がいる限り、つぶすわけにはいかんのですよ」

 検温と消毒を済ませた2人の客が席に着くと、予定時刻よりも少し遅れて公演が始まった。

 ▽崖っぷち

 残念なお知らせです。本日創業以来初めての入場者数0人を記録いたしました―。

 年明け間もない1月7日、木村さんはツイッター上で静かに悲鳴を上げた。松山市内の酒類を提供する飲食店に午後8時までの営業時間短縮が要請されると、ツイッターには明かりがともっていない近所の繁華街の写真が、続けざまに投稿されるようになる。