崔哲浩「在日コリアンの身近な体験を全部取り入れました」
2月11日(金・祝)〜シネマート新宿ほか、なんばパークスシネマ(大阪)、神戸国際松竹(兵庫)、京都みなみ会館(京都)、名演小劇場(愛知)、千石劇場(長野)、福山駅前シネマモード(広島)で公開されるのを前に、映画『北風アウトサイダー』90秒版予告編と監督・脚本・主演の崔哲浩のオフィシャルインタビューが届いた。

ヨンギは自分自身です

Q. 自叙伝的映画とのことですが、崔さんが演じた長男・ヨンギは、崔さんとどのような関係ですか?

今回僕が脚本も書いたんですけれど、ヨンギは自分自身です。兄弟3人出てくるんですが、最も自分の実話・想いに近い役です。今回兄弟男3人、妹が1人の4兄妹の話なのですが、僕の幼少期からの体験を兄弟3人に散りばめました。キャスティングしていく中で、僕がヨンギを演じるのがバランスがいいのではないかと思いました。

Q.本作のテーマをお教えください。

テーマは、「人間とは」、「愛とは」、遺伝子だったり、昭和平成令和と時代が流れている「時代の継承」、親から子、孫、そして思想の意味もある「血脈」です。この4つを主軸にして脚本を書き、撮影をしました。

Q. 本作の何パーセントが事実で、何パーセントがフィクションなんですか?

90%位が本当です。10%がフィクションだったり、エンタメにするためにバランスを取った形です。オモニ食堂というのはないんですが、(自分自身が経験したとは限らず、)隣も、隣の隣も在日コリアンだったので、親族、家族のように育った在日コリアンの身近な体験を全部取り入れました。

Q.ヨンギ役を演じるにあたって、大切にしたことは何ですか?

心の病を持っているという役なんですが、オモニもなんです。その血を引いているということで精神が不安定な役を演じようと思って、精神病棟に取材に行って、目の合わせ方や、健常者だったらこう捉えるけれど、心の病気がある方は違う風に捉えてしまうこともある。また、家に戻った映画の後半は、健康を取り戻し、元気になっていく過程を意識しました。

Q. 崔さんのお母さんもノイローゼ気味あったんですよね?

がっつりですね。実体験です。

Q. ヨンギの「ひょっとしたら、壁作ってるのは、俺ら在日朝鮮人の方ちゃうかな」というセリフがありますが、普段から考えていることなのですか?

実際思っていることです。僕は日本と在日コリアン、両方の友達がいるので、在日コリアン側が心を開いた方がいいんじゃないかと思うこともあります。

Q. チョロに「おかえり」と言われて泣き崩れるシーンなど、カメラマンさんに自分をアップにしてと言えばしてもらえるのに、あえて目立たないようにしているように思ったのですが、意図はありますか?

僕が20数年前に『ホタル』(2001)という映画で高倉健さんと共演した時に、健さんはカメラの前では一切泣かなかったんですよ。撮影が終わってスタッフがバラシ出したら、おもむろに歩き出し、40分位泣いていらっしゃったんです。僕の中では、「女優はカメラの前で泣いていいけれど、俳優はカメラの前で泣いたらあかん」という健さんや(菅原)文太さんの理念が10代の頃からあるんです。

Q. オモニの「朝鮮人も日本人もみんな人間だから、仲良くできる時代が必ず来る」という言葉は、実際昔から言われてきたのでしょうか?

うちのオカンから聞きたかったんですけど、うちのオカンは言っていなかったです。ただ、そういうことを言う在日の方々もたくさんいらっしゃいました。

Q.「あんたら在日が在日じゃなかったら、もっと仲良くできるのに。」、「私はあんたがどこの人やろうと仲良くできるで」、「これ以上あなたたちを変な目でみたくないんですよ」というやりとりも切実でしたが、実際にそのようなことを言われたことがあるのでしょうか?

もちろん30年前は実際にありました。小学校、中学校までは。幼稚園、小学校の頃はモロいじめられていました。

Q.次男・チョロの妻・朱美が不妊症で、娘のナミと血が繋がっていないことで、色々なドラマが生まれますが、養子という話は、フィクションですか?

お隣さんの本当の話なんです。兄弟に子供を1人あげて、その養子には二十歳くらいになるまで言っていなくて。でも中学くらいから「何か変だな」ってわかっていたみたいです。