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映画「ひまわり」の一場面 Ⓒ 1970 - COMPAGNIA CINEMATOGRAFICA CHAMPION(IT) - FILMS CONCORDIA(FR) - SURF FILM SRL, ALL RIGHTS RESERVED.

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、半世紀以上前にウクライナで撮影された映画「ひまわり」を上映し、反戦を訴える動きが全国各地に広まっている。出版界でも20年前に発行された「物語 ウクライナの歴史」(中公新書)が注目され、週間ベストセラーの新書部門で1位に。関係者らは反響の大きさに驚きつつ、一刻も早い平和の訪れを願っている。

ウクライナで撮影、興行収入の一部寄付

 映画「ひまわり」は戦争によって離れ離れになった夫婦の悲しく切ない愛を描いた、映画史に残る名作だ。各地で上映されている「50周年HDレストア版」は2020年に最新のデジタル技術で映像や音を修復したもの。ウクライナ侵攻が始まり、配給会社「アンプラグド」(東京都港区)は3月1日、シアターセブン(大阪市淀川区)など全国3館に声をかけた。担当の池田祐里枝さん(34)は「いずれも上映を即決してもらい、そのことをツイッターで知らせると全国から問い合わせがあった」と話す。上映は市民団体などによる自主的なものも含め約80カ所。募金箱を設置する劇場もあり、興行収入の一部はウクライナの人道支援のために寄付される。池田さんは「上映を呼びかけていいか悩んだが、意義のある鑑賞機会になればと願っている」と話す。

 シアターセブンでは当初、3月19日から25日までの予定で上映を始めたが、満席の回も相次ぎ、4月以降も続ける。番組編成担当、小坂誠さん(34)は「ヒマワリ畑の印象的なビジュアルだけでなく、反戦を訴える力のある作品。何としても上映したいと思った。幅広い世代の方に来ていただき驚いている」と話す。

 「ひまわり」は、ビットリオ・デ・シーカ監督。第二次世界大戦中、イタリア・ナポリの娘ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は陽気な兵士アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と恋に落ち結婚する。幸せな新婚生活はあっという間に終わり、アントニオは「地獄」と呼ばれるソ連戦線へ送られる。戦争が終わっても戻らない夫を捜すため、ジョバンナはソ連を目指す。イタリア軍が戦っていたウクライナに向かったジョバンナ。見渡す限りのヒマワリ畑の果てに彼女が見たのは、地元の女性と結婚し子供にも恵まれたアントニオの幸せそうな姿だった。

「戦争は嫌」と感じるきっかけに

 作中に登場する広大なヒマワリ畑はウクライナの首都キーウ(キエフ)の南、約500キロのへルソン州で撮影された。小坂さんは「あのヒマワリ畑がウクライナだったとは知らず驚いた。ウクライナで起きていることを今すぐ止めることはできなくても、作品を見た一人一人が『戦争は嫌だ』と感じるきっかけになれば」と話した。全国の上映館は映画公式サイト(http://himawari-2020.com/)で。