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テキサスの小学校で起きた銃乱射事件を見て、拳銃所有を禁止する法案を提出したトルドー Blair Gable-REUTERS

<テキサスの銃乱射事件を見たカナダのトルドー首相が、これまでの自動小銃に加えて拳銃の所有も禁止する法案を提出すると、この世の終わりのようなありえない警告や陰謀論がアメリカの保守派から飛び出した>

相次ぐ銃乱射で共和党に改心の兆し?
カナダのジャスティン・トルドー首相が提案した新たな銃規制について、米国の保守派は強い口調で非難し、米国でも同様の厳しい規制が課されることへの懸念を表明した。ある議員は、「ディストピアな未来」を警告している。

トルドーは5月30日、拳銃の所有を全面的に禁止する法案を議会に提出した。カナダではすでに、1500種類を超える自動小銃が禁止されている。

「カナダでは今後、拳銃の売買、譲渡、輸入を禁止したい」とトルドーは言った。

米テキサス州ユバルディの小学校で5月24日に起きた銃乱射事件を受けた動きだ。この事件では、19人の児童と2人の教師が犠牲になった。

米国の保守派は、カナダのこの法案を強く批判しており、米国でも同様の対策が取られるのではないかとうろたえる様子も見られた。

ケンタッキー州第4区のトーマス・マッシー下院議員は、次のようにツイートしている。「トルドーがカナダにもたらそうとしているディストピア的な未来は、もし米国民が止めなければ、米国にもやって来るだろう」

ノースカロライナ州第9区のダン・ビショップ下院議員は、トルドーの発言の一部を動画で共有し、次のように書いている。「米国の憲法は、神からの贈り物だ。独裁主義に対する防波堤だ。米国民だけが享受できる利益だ。米国例外主義の根底にあるものだ。守り抜くことができるだろうか?」

フロリダ州第1区のマット・ゲーツ下院議員もトルドーの動画を共有し、カナダ国歌のパロディーとしてこう書いた。「真の北国、堅固にして(不)自由なり」

保守派団体アクト・フォー・アメリカの創設者でもあるブリジット・ガブリエル会長は、トルドーの行動を、米民主党の銃規制支持と関係づけた。

「カナダは、まず『軍事用自動小銃』を禁止し、今度は拳銃を禁止しようとしている」とガブリエルはツイート。「『自動小銃』だけを禁止したいと言うアメリカの民主党議員は全員、嘘をついている」

テネシー州第5区の下院議員に立候補しているロビー・スターバックは、「AR-15自動小銃だけを規制するという左派の言葉を信じてはいけない。それで終わるはずがないからだ」と書いている。

「カナダを見ればわかる。2020年、彼らはAR-15を禁止した。それから2年と3週間後、彼らは拳銃も禁止しようとしている。これが民主党の計画だ。彼らにだまされてはいけない。合衆国憲法修正第2条の権利(武器保有権)を侵害させてはいけない!」

メリーランド州第5区の共和党候補者クリス・パロンビは、次のようにツイートしている。「ああ、カナダよ......トルドーは北の隣国を、全体主義の独裁国家に変えようとしている。このままいけば、彼らはいずれ銃の押収を始めるだろう...」

「歴史から学ばない者は、歴史を繰り返す運命にある」と、パロンビは述べている。

カナダの新法案は、「最高刑を引き上げ、銃犯罪の捜査手段を拡充することで」、銃器の密輸と密売に立ち向かうことを目的としている。

この法案が行き過ぎではないかという質問に対し、トルドーは、米国で起きていることに言及した。

「迅速かつ断固とした措置を講じなければ、状況がどんどん悪化し、対処が難しくなることは、国境の南を見ればわかる」

(翻訳:ガリレオ)

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