意外な日本一を紹介してきたTABIZINEの連載。今回は、旅の目的にもなる「鉄道」に関する日本一を紹介します。

41駅、275.5kmの距離を4時間6分で走る「鈍行」

鉄道の旅行は好きですか? 新幹線で一気に遠くへ出かける旅が主流ですが、「鈍行」(定期普通列車)でのんびりと移動を楽しむ旅もいいですよね。そんな鈍行の中でも、始発駅から終着駅まで、もっとも長い距離を走る普通列車は、どこの路線を走っているかご存じですか?

実は、この日本一の座は目まぐるしく入れ替わっています。JRのダイヤが変わり、路線が廃止されたり、始発駅と終着駅に変更が生じたりするたびに、その座が交代してしまうからです。

では、この2022年7月時点で、最長の距離を走っている「鈍行」は、どの辺を走っていると思いますか? 北海道でしょうか。中国地方でしょうか、東海地方でしょうか。答えは、福井県の敦賀から兵庫県の播州赤穂を結ぶJR北陸本線新快速・播州赤穂行きになります。

https://tabizine.jp/wp-content/uploads/2022/07/479925-05.jpeg
JR北陸本線 Photo by Toshinori baba Wikipediaより

福井県は日本海側、北陸の自治体。その中でも「嶺南」と呼ばれる・県南部の主要都市敦賀から41駅、275.5kmの鉄路を4時間6分ほどで走り、岡山県との県境も近い兵庫県西部の播州赤穂まで行く鈍行です。

正確には快速なので、鈍行とは言えないかもしれませんが、275kmはなかなかの距離です。例えば、東京から福島まで、東北自動車道で向かうと257.3kmです。それ以上の距離を移動するのですから、たっぷりと電車移動を楽しめますよね。

台風による水害で日本最長の「鈍行」が分断される

日本最長の鈍行については補足も必要です。2022年(令和4年)1月に沿線の自治体が鉄路存続を断念するまで、北海道には、もっと長い鈍行が名目上で残っていました。

札幌と旭川の間にある滝川から富良野、帯広を経由して釧路まで行くJR根室本線の普通列車です。滝川から釧路の間308.4kmを8時間21分かけて走る鈍行がダイヤの上では存在していました。

2016年(平成28年)8月の台風10号による水害で富良野・新得間が不通になり、ほどなく一部で運転再開したものの、日高山脈を越える辺りの線路は被災が深刻で、再開のめどが立ちませんでした。

不通区間はバスで乗客を運ぶ対策をとります。そのため、日本最長の鈍行は長らく分断状態が続いていたのですね。

しかし、JR北海道は水害の年の秋に、富良野・新得間の廃止の意向を早々に示していました。

存続を望む沿線の自治体はJR北海道と議論を重ねてきましたが、国の財政支援も期待できない中で自治体の負担は現実的ではないため、鉄路が断念されたと、2022年春の時点で報道が出ています。

JR根室本線と最長記録を競い合う「鈍行」も

この災害の前後では、JR根室本線と最長記録を競い合う鈍行もほかに存在していました。JR山陽本線の普通列車で、2017年(平成29年)の春まで、岡山から下関まで384.7kmを走った鈍行がありました。