Q 卵は1日1個まで、と思ってきたのですが、家族が「今は何個食べてもいい」と言います。本当なのでしょうか。

A 1~2個程度でバランス良く
 安価で手軽に調理でき、栄養価も高い卵。でも「コレステロールが気になって…」という声をよく聞きます。東京家政大特命教授で管理栄養士の峯木真知子さん(71)に、適切な卵の摂取量について聞きました。
 「卵にコレステロールが多いのはそのとおり」と峯木さん。一個(Mサイズ、殻なし約五十グラム)あたり約百八十五ミリグラムのコレステロールが含まれ、そのほとんどは卵黄からのものです。ウナギのかば焼き(一串二百三十ミリグラム)、イクラ(十グラムで四十八ミリグラム)などとともに、コレステロールが多い食品の一つです。

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 そのため、卵を長年にわたって食べ続けると、血中コレステロール濃度が上昇し、動脈硬化のリスクが高まる、と考えられてきました。一九六〇年代には米国心臓協会が「卵の摂取は週三個まで」と個数の制限を推奨していました。
 ただ、コレステロールは八割が体内で作られ、食事から摂取されるのは二割程度。また、体内のコレステロール量は一定に保たれるよう肝臓で調節されるので、「健康な人は高コレステロール食品を食べたからといって、血中のコレステロール濃度が上がるわけではありません」。ただ、家族性高コレステロール血症などにより、この調節機能が衰えている人は注意が必要です。
 では、卵は一日何個まで食べていいのでしょうか? 二〇一九年の厚生労働省の国民健康・栄養調査報告では、二十歳以上の日本人が一日に摂取しているコレステロールの平均値は男性三百六十六ミリグラム、女性三百十七ミリグラム。男女ともにそのほぼ半分を卵から摂取しています。

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 従来、国は一日のコレステロール摂取目標量を男性七百五十ミリグラム、女性六百ミリグラム未満と示していました。しかし一五年の改訂で数値目安を削除しました。国の研究班による研究で、卵の摂取頻度によって、血中コレステロール濃度は変わらないことや、冠動脈疾患の発症リスクに関連がないことなどが分かったためです。一部で「いくつ食べてもいい」という認識があるのは、こうした対応の変化も背景にありそうです。
 「いろいろな食材をバランス良く食べていれば、卵の個数をことさら気にする必要はないです。ただ『ばっか食い』にならないように一日一~二個程度にしてください」と峯木さん。
 コレステロールは体に悪いイメージがありますが、本来は細胞膜を構成したり、ホルモンの原料になったりする重要な栄養素。峯木さんは「オムレツなどで三~四個食べた日は、その後の食事でコレステロールが低いものを選ぶなど調整しながら、上手に卵を取り入れてほしい」と呼びかけます。 (小林由比)

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