0001きつねうどん ★
2022/08/02(火) 06:48:57.39ID:CAP_USERhttps://www.yomiuri.co.jp/media/2022/08/20220801-OYT1I50108-1.jpg?type=large
タコの滑り台(7月24日、兵庫県赤穂市で)
強い日差しが照りつけた7月下旬の日曜日。住民から「タコチュー公園」の愛称で親しまれている兵庫県赤穂市の尾崎第3公園では、真っ赤なタコの滑り台から子どもの歓声が響いていた。
足に似たスライダーを滑り降りたり、胴体との間にぽっかり空いた空洞でおしゃべりをしたり。高さ3・5メートル、幅5・5メートルのこの滑り台が約3年にわたった法廷闘争の舞台となった。
訴えていたのは、滑り台を作った「前田環境美術」(東京都渋谷区)。63年に設立された前身の会社が「第1号」を作って以来、全国に200基以上を送り出してきた、いわば「生みの親」だ。
同社が問題視したのが、2012年と15年に東京都足立区と東久留米市に設置された2基の滑り台だった。同社は19年8月、「赤穂市のものと酷似しており、著作権を侵害された」として、2基を作った遊具会社「アンス」(東京都狛江市)に約430万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
滑り台のデザインはそもそも、前身会社に勤めた後、多摩美術大教授になった彫刻家の工藤健さん(85)が手がけたものだ。タコの滑り台をテーマにした写真集も出版されている。
前田環境美術側はそれらを根拠に「滑り台には制作者の思想や感情が創作的に表現されている」と主張。「頭と胴体を正面から見ると山のような質感があり、空洞などの神秘的な空間を設けたモニュメント彫刻だ」と訴えた。これに対し、アンス側は「美的鑑賞の対象となる部分は認めがたい」と反論していた。
2021年4月の地裁判決は、滑り台は遊具で、展示目的の芸術作品とは異なるが、鑑賞の対象となり得る美的な特性があれば著作物として保護されると指摘。その上で「タコの体に似た印象を与える外観は見栄えがよい」と言及した。
しかし、タコの頭や足、空洞の形状は滑り台を滑ったり、かくれんぼなどの遊びをしたりするために不可欠なもので、「遊具のデザインとしての域を出ない」として請求を棄却。同年12月の知財高裁判決と今年7月の最高裁決定も原告側の主張を退けた。
敗訴が確定した前田環境美術の代理人弁護士は「創作性のあるものにはできるだけ広く著作権を認め、文化の発展につなげていくのが司法の役目だ」と批判。一方、勝訴したアンスの荒生祐一社長(80)は「遊具は発注者と話し合って安全性も加味して作るもので、誰かの芸術作品ではない。今後も地域の文化や歴史を踏まえた遊具を作っていきたい」と話した。