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黒猫(maron / PIXTA)

クロネコヤマトではなく、エロネコヤマト――。宅急便のクロネコヤマト(ヤマト運輸)のロゴやデザインを模したパロディグッズがネットで話題になっている。

誰もが知る有名ロゴをもじり、笑いを誘うパロディグッズは、街中や通販で売られている。このような商品はそもそも問題ないのか。知的財産権にくわしい齋藤理央弁護士に聞いた。

●パロディ=常に「商標権侵害」となるわけではない
ーーパロディTシャツをはじめ、パロディグッズには、どのような法的問題があるのでしょうか。

パロディグッズでまず問題となるのは、商標権侵害の有無です。パロディグッズをめぐっては、商標権侵害などを争点とする裁判例がいくつか存在します。

記憶に新しい裁判例は、フランクミュラーのパロディ時計の商標「フランク三浦」について特許庁で無効と判断されたのに対して、知財高裁が商標を有効と判断し、逆転勝訴とした事件です。

このケースは、いくらなんでも「フランクミュラー」と「フランク三浦」を同じ営業主の商品と勘違いする人はいないだろう、という裁判所の判断のもと、パロディ側の勝訴となりました。

このようにパロディだから常に商標権侵害となるわけではなく、消費者(需要者)が営業主を勘違いするおそれがあるかどうかが問題となります。そして、勘違いのおそれがないのであれば、商標権侵害は通常生じません。

ーーたとえばクロネコヤマトのロゴやロゴに付されたエンブレムもパロディに利用する場合は、どうなりますか。

このような場合、著作権法も問題になるケースがあります。

丸や四角を組み合わせたシンプルなエンブレムなどであれば、著作権法は通常問題となりません。一方、たとえばクロネコヤマトのマークは、猫のイラストがシンボルマークになっています。このように動物などのイラストをエンブレムなどにしている場合、著作権法の保護が及ぶ可能性があります。

参考になる裁判例としては、ハードオフのロゴや、ピクトグラムの共通性を有する部分について著作物性が判断された事例があります。このケースでは、Tシャツなどのシンプルな描写(の共通する部分)について著作物性が否定されています。

ロゴやエンブレムなどについて、著作物性が肯定される場合は、著作権侵害の可能性も出てきます。そして、日本の著作権法はパロディを適法化する規定がなく、パロディに厳しい法律になっています。

著作権の保護対象となるロゴやエンブレムなどについて、パロディに利用した場合、日本では違法となる可能性が高いので注意が必要です。

●日本はパロディに不寛容な一面も
ーー2016年には、パロディTシャツを販売していた店舗が摘発されたことが報じられました。しかし、今も街中や通販で気軽に買うことが可能となっています。なぜ、摘発される店、されない店があるのでしょうか。

複数の要因が関係していると思います。影響が大きいのは、パロディの悪質性や商業としての規模、そして権利者の意向などです。

特に影響が大きいのは、権利者の意向ではないでしょうか。つまり、権利者がパロディ商品を半ば慣習的に放任していることが、摘発に至らない最大の理由というケースも多いのではないかと思います。また、販売の規模が大きかったり、悪質性が高い場合は、権利者も放置できなくなる可能性も高まります。