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衆院本会議で所信表明演説をする岸田文雄首相=国会内で2022年10月3日午後2時3分、内藤絵美撮影

 第210臨時国会は3日召集され、岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説を行った。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題について悪質商法や高額寄付被害者を救済するための消費者契約関連の法改正を検討すると表明。構造的な賃上げ実現に向け、リスキリング(職業能力の再開発)支援に5年間で1兆円を投じるとした。

 首相は冒頭、福島復興などへの思いを語った上で、自身の政治姿勢に言及した。賛否が割れた安倍晋三元首相の国葬に関して「さまざまなご意見を重く受け止め、今後に生かす」と説明。旧統一教会問題との関係についても「国民の声を正面から受け止める」と言及し、「信頼回復のため各般の取り組みを進める」とした。具体的には「悪質商法や悪質な寄付による被害者の救済」に向け「消費者契約に関する法令などについて、見直しの検討をする」という。

 「厳しい意見を聞く姿勢にこそ、政治家・岸田文雄の原点がある」と強調。「厳しい声にも、真摯(しんし)に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことを誓う」とし、「初心を改めて肝に銘じながら、職責を果たすべく全力で取り組む」と訴えた。

 その上で内外政の説明に移り、「日本経済の再生が最優先の課題」だと訴えた。物価高・円安への対応▽構造的な賃上げ▽成長のための投資と改革――の3点を「重点分野」に設定。世界的なエネルギー価格高騰で値上がりが予想される電気料金について「家計・企業の負担の増加を直接的に緩和する前例のない思いきった対策を講じる」とした。

 併せて「円安のメリットを最大限引き出して、国民に還元する政策対応を力強く進める」と訴え、外国人の個人旅行解禁などを通じて訪日外国人による旅行消費を年5兆円超に増やす目標などに言及した。

 リスキリング支援については成長分野に人材を移動させるための方策と位置づけ、年功序列型賃金の見直しなどにも引き続き取り組むとした。労働移動円滑化に向けた指針を2023年6月までにまとめるという。

 エネルギーの安定供給に向け「原子力発電の問題に正面から取り組む」と強調。原発「十数基」の再稼働や次世代原発の開発・建設に向けた議論を年末に向けて加速させるとした。

 新型コロナウイルス対策のマスク着用について首相は、近くで会話をしない限り「引き続き屋外では原則不要」だと訴えた。

 外交・安全保障では防衛力の5年以内の抜本強化に言及。必要な内容と予算規模の把握、財源の検討を「一体的」に進めるとした。憲法改正を巡っては発議に向けた国会論議の加速に期待を示した。

 臨時国会の会期は12月10日までの69日間で、5日から各党による代表質問が始まる。政府は物価高対策などを盛り込んだ22年度第2次補正予算案を会期中に提出する。【高橋恵子】

所信表明演説のポイント

・旧統一教会問題について悪質商法被害者救済へ消費者契約関連法令の改正検討

・安倍晋三元首相の国葬への意見を今後に生かす

・厳しい声にも真摯(しんし)に謙虚に丁寧に向き合うことを誓う

・電力料金負担増を緩和する思い切った対策を講じる

・リスキリング(職業能力の再開発)支援に5年間で1兆円を投じる

・訪日外国人の旅行消費年5兆円超を目指す

・原発問題に正面から取り組む

・防衛力抜本強化に必要な予算と財源の検討を一体的に進める

・マスクは屋外では原則不要

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