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 トラック輸送による環境負荷低減のために「モーダルシフト」が注目されて久しい。モーダルシフトは、鉄道や船舶など、トラックより環境負荷が小さい輸送手段への移行を指す言葉だ。

 ただ、大量の荷を確保する必要があることや、国内輸送の大部分が500km未満の輸送距離であること、ラストマイル輸送では結局トラックが必要になることなどから、国内のモーダルシフトはなかなか進まなかった。

 しかし、ヤマト運輸と東京九州フェリーのモーダルシフトが進展している。2022年9月には、およそ一年前の開始当初と比べて6倍に規模を拡大した。

 背景にあるのは温室効果ガスの削減という環境問題だけではなく、トラックドライバーの労働力不足や、働き方改革により輸送の効率化が求められたことなども影響しているようだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真・図版/ヤマト運輸・東京九州フェリー・フルロード編集部

ヤマト運輸の東京・九州間フェリー輸送は1年で6倍に
 日本国内の貨物は、その半分以上をトラックが運んでいる。ただ、同じ重さの荷物を運んだ場合、トラック輸送は船舶輸送の5倍以上のCO2を排出するという(国交省による2020年度の計算)。

 トラックによる環境負荷を抑えるために、より環境への影響が小さい鉄道や船舶を活用した輸送手段に切り替える「モーダルシフト」に注目が集まっている。

 宅配便大手のヤマト運輸と、SHKライングループ傘下の東京九州フェリーは、2021年7月から関東・九州間の海上輸送を活用したモーダルシフトを開始しているが、その後、順次輸送規模を拡大し、2022年9月からは開始当初の6倍まで拡大したと発表した。

 ところで、フェリー輸送がトラック輸送をコスト競争力で上回るのは、一般に片道500km以上の長距離輸送とされる。また船舶は港から港までしか移動できないため、ラストマイル輸送はやはりトラックが担うことになる。

 長距離ドライバーにとっては「船に仕事を奪われる!」という状況もあるかもしれないが、昨今のドライバー不足や働き方改革の推進を考えると、モーダルシフトによる効率化はトラックドライバーにもメリットがある。フェリー輸送の急拡大はドライバーにとって必ずしも悪いことではない。

実際の運用は?
 ヤマト運輸が持続可能な社会の実現に向けて、関東・九州間のトラック長距離輸送の一部を東京九州フェリーの海上輸送に切り替えたのは、2021年の7月だった。神奈川県の横須賀港と、福岡県の新門司港を結ぶフェリー輸送だ。

 従来のトラック輸送と比較すると、温室効果ガスの排出量を年間で約1400トン(66%)削減する効果があったという(経産省・国交省の「ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイドラインVer.3.1」による推計値)。