シャインマスカット、ルビーロマン、マイハート……日本産高級ブドウの、韓国・中国への流出が止まらない。シャインマスカットだけでも、日本側の経済損失は年間100億円以上と言われる。「韓国が日本のブドウを盗んだ」事態になっていることに対して、韓国では「他の名前で売ればいい」「韓国から盗んだものを先に返して」などという反応が多かったが、徐々にメディアの論調が変化してきたようだ。なぜ風向きが変わってきたのだろうか?(ビジネスライター 羽田真代)

甘さが足りず、実がブヨブヨ……韓国産シャインマスカット
 広島生まれのシャインマスカットが韓国に流出して数年が経った。最近になって日本でも報じられているように、現在流通している韓国産シャインマスカットの味を一言で表すと「ビミョウ」だ。本来の甘みは感じられず、実はブヨブヨしていて皮が厚い。シャインマスカットは甘くて皮ごと食べられることが魅力だったのに、皮ごと食べてもまったくおいしいとは思えない。

 日本の果物の苗木をそのまま韓国で育てても、同じような果実は栽培できない。単価が高いシャインマスカットに飛びついた農家たちだったが、技術やノウハウがないために自分たちの手で高級ブドウの魅力をつぶしてしまった。

 日本から韓国に流出した高級ブドウは、シャインマスカットだけではない。今年はルビーロマンとマイハートまで流出していたことが判明した。しかし、これらのブドウもシャインマスカットと同じような道をたどることになるのではないだろうか。だから、日本の農家は韓国に臆することなく、高品質なブドウを世界に送り出してほしいと思う。そして、これまでの失敗を教訓に、韓国などに奪われた世界の高級ブドウ市場を一刻も早く取り返してほしいとも思う。

 一方で、立て続けに「韓国が日本のブドウを盗んだ」と日韓両国メディアが報じたことによって、韓国側、とりわけ韓国メディアの反応が変わってきたように思う。今回は現在の韓国ブドウ市場をご紹介しながら、韓国国民とメディアの反応まで見ていきたい。

ルビーロマンの韓国流出
 まずはルビーロマンの流出について、経緯を紹介しよう。

 朝日新聞が11月7日に報じた「岸田首相も安倍氏も食べた高級ブドウ、韓国に流出 裏目に出た戦略」という記事が韓国内で拡散されたことが、事の発端だった。同月8日には、中央日報、ヘラルド経済、毎日経済など、各紙がルビーロマンの韓国流出について記事を出し、いずれも閲覧・コメント数の上位にランクインし、韓国国民からの反応も相当なものだった。

 朝日新聞が報じた内容を要約すると、次の通りだ。初競り価格で1房150万円もの高値がついた石川県産の高級ブドウ「ルビーロマン」の苗木が韓国に無許可で渡った。1995年からルビーロマンを開発・販売してきた石川県が、今年8月にソウル市内のデパートや高級スーパーマーケットなど3店舗で、ルビーロマンという名前で販売されているブドウを3房購入してDNA鑑定した結果、石川県産のルビーロマンと遺伝子型が一致した。生育期間から、5年以上前には苗木が流出していたとみられる……という内容だった。

 加えて、韓国の「偽物」ルビーロマンは日本の正規品に比べて形が悪く、色もきれいではない。正規品のルビーロマンは1粒の大きさが20グラム以上、糖度が18度以上あるが、韓国のものは粒が小さく、糖度も16.7度と低かったという。

 石川県は、韓国特許庁にルビーロマンに対する商標登録を出願していた。韓国特許庁がこれを受け入れれば、ルビーロマンという名称を使う韓国の農家は日本にロイヤルティーを支払って販売・輸出しなければならなくなる。