我々がふだんよく見かけたり使ったりする「ガムテープ」
 皆さんが「ガムテープ」だと思っているモノ、ガムテープじゃないかもしれません……。大半の人が想像するであろう、茶色の紙や布で作られたあのテープ、正式には「ガムテープ」ではないという情報が飛び込んできました!

 いったいどういうことなのか、“本物のガムテープひとすじ”で、製造販売を行う三陽工業株式会社(愛知県名古屋市)に聞きました。

 三陽工業は「本物のガムテープ」を作る会社。そもそもガムテープの“本物”とはどんなものなのでしょうか?

「ホームセンターなどで梱包用に販売されているテープのことを大概の方は『ガムテープ』と呼んでいますが、正しくは『クラフト粘着テープ』です。本来のガムテープとは、クラフト紙に糊(のり)材を塗布し乾燥させたテープのこと。使用時には切手のように水をつけて粘着させます。一般消費者ですと、貼る前の状態のガムテープを見ることはまずないと思います」(三陽工業)

 簡単に言うと、“濡らさずにすぐ使えるテープ”はガムテープではないようです。

 では、なぜガムテープという名称の誤用が広がっているのでしょうか? 

「まず、アメリカから日本へ、水で濡らして使う“本来のガムテープ”がやってきました。ですが、後に粘着テープ版の方が手早く便利だったことから、急速に普及していきました。見た目も似ていたことからそれらも“ガムテープ”と呼ばれるようになったのでは……と推測されます」(三陽工業)

 また「ガムテープ」は商標登録されていないため、例え粘着テープをガムテープと名づけ販売したとしても法的な問題はないそうです。

 実際、ガムテープはどのようなシーンで使われているのでしょうか。

「皆さんもよく知る、通販大手・A社の段ボール梱包にはほとんどガムテープが使用されていますよ」(三陽工業)

 というのも、ガムテープは剥がすと段ボール箱に剥がした跡が残るため、無断開封による盗難や商品の刷り替えなどを防止することができるのです。そのため、商品の仕入れの梱包や通販の梱包に適しているとのこと。

 筆者宅にあったA社の空き箱を見てみると、粘着テープとは違ったテープで梱包されているのを確認できました。これが三陽工業のいう「本物のガムテープ」なのではないかと思われます。

 三陽工業いわく、ガムテープは湿度や温度などの影響も受けにくく、印刷や捺印・筆記もできるので宣伝印刷が可能、そして素材が環境にも優しいなど、メリットが豊富とのこと。ただ「水につけて使う」という手間が、一般ユーザーにとってはデメリットであり、生活に馴染まない大きな要因と言えそうです。

 ガムテープが誤認識をされていることを、業界はどう感じているのでしょうか? 

「10年ほど前に声をあげ、メディアへ『ガムテープ』という名称を誤用しないように呼びかけました。現在は認識も広まり、テレビなどでも『粘着テープ』と呼ばれるようになっていますね」(三陽工業)

 さらに、同社はガムテープの誤用が完全に認識されることは難しいとも考え、ガムテープを「水テープ」として呼ぶことも広めており、商品名にも反映しています。

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 なにげないアイテムでも、同じように見えて実はいろいろ違いがあることがわかりました。今度ダンボールを開封するさいは、使われている「テープ」をじっくり観察すると面白いかもしれません。

(取材・文=宮田智也 / 放送作家)

https://jocr.jp/raditopi/2022/12/13/470656/