2022年12月21日 22時20分毎日新聞
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12159-2062475/

 会計検査院が21日に発表した東京オリンピック・パラリンピックの開催経費は、大会組織委員会が「最終報告」とうたった6月の金額より約3000億円増えた。検査院の報告によると、多額の経費をかけた購入物品が五輪後は有効活用されていなかったり、大会中に余って処分・廃棄されたりしたケースもあった。

「電波監視装置」18台中14台活用されず

 大会の競技会場などに違法電波が入り込まないよう総務省は大会前、国費で「電波監視装置」18台を計約4億円で購入し、国立競技場や横浜国際総合競技場などに設置した。装置は大会終了後も他の施設などで有効活用することが想定されたが、検査院によると18台中14台(購入費約3億2200万円相当)が倉庫に保管された状態で活用されていなかった。

 検査院は「装置の購入時に大会終了後の移設先を検討しておくべきだった」と指摘しており、総務省は「未活用の装置について、2023年度までに再利用できるようにしたい」としている。

 また、大会関係者などに提供する弁当や医療用品が多く利用されず、処分・廃棄されていたことも報告された。

 検査院の検査結果によると、競技場などで大会組織委員会のスタッフやボランティア、出入り業者などに提供された弁当の購入費は計46億円余に上った。しかし、全体の2割にあたる約30万食が余り、多くが処分されたほか、消費期限が比較的長いパンについてはフードバンクに提供された。

「見通し十分でなかった」

 解散した組織委の業務を引き継いだ清算法人は「余った弁当の多くは出入り業者用で、数が流動的だったので柔軟に対応しきれなかった。報道で弁当が余っていることが指摘されてから発注個数を抑制するなど改善を図ったが、見通しが十分ではなかった」としている。

 また、選手村や競技会場などで大会関係者や選手、医療従事者ら用に準備されたマスクやゴム手袋などの購入費には国費のコロナ対策交付金を充てる予定だったが、一部(計約500万円相当)が未使用のまま廃棄されていた。清算法人は「組織内部の指示が徹底されず廃棄されていたが、大会中に外部からの指摘を受けて以後は、余剰分を医療機関などに譲渡した」としている。結局、廃棄分は交付金対象から外し、組織委の財源を充てたという。

 他にも、パラリンピックの車いすアスリートが利用するバス乗降用の可動式スロープ2台(1650万円相当)が活用されずに処分されていた。

 組織委は大会前、購入費の一部に国費のパラリンピック交付金を充てる予定で12台(9900万円相当)を取得した。6カ所に設置予定だったが、うち2会場は図面より実際の設置スペースが狭く、取り付けるとバスが道路の中央にはみ出すため、使えなかった。代わりにボランティアなどが選手を手伝い、乗降に支障はなかったという。結局、2台分のパラリンピック交付金相当分も組織委の財源を充てたとしている。【安達恒太郎】