12/24(土) 17:00  夕刊フジ
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba237a9fb6b6c4d9c2454e83d5af1d87bcd72858

【ニュース裏表 平井文夫】

岸田文雄首相は先週金曜(16日)、国家安全保障戦略を決定し、「反撃能力の保有」という日本の安全保障政策の歴史的転換を成し遂げた。防衛費増額の財源については、「増税」の実施時期を明記しないという「先送り」で党内保守派に配慮した。

【安保3文書】「国家安全保障戦略」が規定する「防衛費を補完する取り組み」

これを受けて先週末、フジテレビと産経新聞が行った世論調査では、「反撃能力」を「持つべき」が61%で、「持つべきでない」の33%を大きく上回った。一方、防衛増税は「評価する」26%を、「しない」70%が大きく上回った。毎日新聞の調査も同様の結果だった。

フジ・産経と毎日で、1つ面白い違いがあった。

フジ・産経が「今後5年間の防衛費を総額43兆円と大幅に増額する方針」について聞くと、「評価する」の46%を、「しない」の48%が上回った。これに対し、毎日が「防衛費を大幅に増やす政府方針に賛成か」と、「43兆円」という額を入れずに聞くと、「賛成」48%が、「反対」41%を上回ったのだ。

毎日の調査で、もう1つ面白かったのは、防衛力強化の財源について「増税」に賛成が23%しかいなかったのだが、「政策経費削減」にも20%、「国債発行」にも33%しか賛成はなく、いずれも反対の方が大きく上回ったことだ。財源はこの3つしかないのだから、どれもイヤというのはワガママだと思う。

これらの調査を読むと、日本国民は反撃能力の保有など「防衛力の強化」は望んでいるが、「防衛費の増加」については額が具体的になると「尻込み」をし始め、さらに財源を聞くと「思考停止」してしまっているようにも見える。

政府案の所得増税については、今納めている復興税が終わる2037年以降も払い続けることになる、という話なのだが、現在63歳の筆者は、その時は78歳。もう大して所得税は払っていないだろう。はっきり言って50歳以上の人にとって、この所得増税に「増税感」はあまりないのではないか。

法人増税については、賃金や投資への影響が心配されているが、こちらも高齢者にはあまり関係ない話だ。

つまり、この増税は高齢者およびその予備軍は、そんなに心配する必要はなく、逆に若者はもっと怒るべきだろう。もし、筆者が若者なら「増税より年間100兆円を超える社会保障を削れ」と要求する。

岸田首相は増税の決定を先送りしたので、来年の今頃はまた大騒ぎになるだろうが、この世代間ギャップは政治家同士がいくら議論してもどうしようもないと思う。

岸田さんはいっそ解散総選挙をして、国民に「防衛増税の是非」を直接聞いてみてはどうだろうか。 (フジテレビ上席解説委員)