12/28(水) 22:28  古谷経衡
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20221228-00330508

 杉田水脈総務政務官が辞表を提出した。表向きは自発的とも報道されるが、事実上の更迭では、という観測もあり、いずれにせよ遅きに失した感は否めない。杉田氏は、辞表提出に際し、性的少数者やアイヌ民族を巡る発言以外は撤回しない考え等を示すとともに「真意が中々理解されないことがあったが、差別をしているわけではない」などとも釈明した。とはいえ本人が何を言おうが、杉田氏があからさまな差別表現を続けてきたのは事実だ。

・杉田水脈氏はネット右翼の中でも「後発組」〜後発がゆえの過剰同化〜
 杉田氏の世界観を、典型的なネット右翼(ネット保守とも)と呼ぶのであれば、同氏の活動は2014年を端緒(杉田氏は、維新→旧次世代の党で落選してのち、ネット右翼に極めて親和性の高い発言や著作を発表し、その下野中”2014年〜2017年”に急速に認知度を高めたのち、2017年の衆議院比例中国で優遇されて当選を重ねてきた経緯がある)としており、「決して古参」の分類ではなく、明らかに「後発組」だ。

 この業界の中で最も古参とされるのは、民社党(民主社会党・旧社会党右派から分裂等)の西村眞悟氏への熱心な支持者などからなるグループ(旧民社グループ)であり、或いは『新しい歴史教科書をつくる会』などの支持者で、いずれも1990年代からの伝統的な活動歴がある(これを業界的には”古典派”ないし”第一期ネット保守”などと言う)。2000年代ですらなく、2014年という10年代中葉(2022年から考えても10年を経過していない)から活動を始めたのだとすれば、杉田氏のネット右翼歴は比較的新しく、まさしく「後発組」と言えるのである。杉田氏の一連の差別発言問題等は、「杉田氏が長年そういった主張をしてきた」のではなく、「ここ最近言い出した」ことにこそある。これを私は「保守村(ホシュ村)への過剰同化」の典型事例ではないかと思うのである。

 杉田氏の発言は、明らかに既存のネット右翼が長年持っていた世界観の強化バージョンである。とりわけ同氏の発言等が独自のものでも発展させたものでもない。既存のネット右翼が憚らず本音として持っていた部分を拡大再生産させたかなりの部分が杉田氏の世界観には厳然としてある、とみてよい。つまり杉田氏の世界観は独自の価値観ではなく、既存のネット右翼的世界観の強化版にすぎないということである。

 はてさて過剰同化とは、ある特定の共同体に対して、後発に参入するものが「生き残り戦略」ないし「より手っ取り早く承認されたい(常に注目されたい)欲望の実現」のひとつとして往々にして採る態度とされる。例えば日本社会に後から帰化した外国人が、「自らがより日本人=既存共同体の新たな構成員」であることを強く示して共感を得たいがために、「より日本人らしく」(例えば―和装したり伝統文化に勤しんでいることを過剰に喧伝するなど)振舞う―、などと言うのがその一例である。勿論、この逆も然りで後からアメリカ社会の市民権を得た移民が、ネイティブ、つまり元から住んでいた人々からの共感や承認を得たいがために、市井の生活の中で「よりアメリカ人らしく(誰よりもアメリカナイズされた生活態度等)」振舞い、積極的なアメリカの対外戦争やタカ派的価値観に参画していく、などの事例が見られる。

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