果物のビワの種について「食べると、がんに効果がある」という情報が、インターネットなどで広がっていることをご存じだろうか?

実は、ビワなどのバラ科の植物の種や未熟な果実の部分には、「アミグダリン」という青酸を含む“天然の有害物質”が多く含まれている。一度に大量にとると、頭痛、めまい、悪心、おうとなどの中毒症状を起こし、場合によってはけいれんや呼吸困難になり、死に至ることもあるというのだ。

一方で、インターネットや書籍の情報には「がんに効果がある」とうたったりして、健康に良い成分としているものがある。こうした状況を受け、農林水産省は「ビワの種の粉末は食べないようにしましょう」と呼びかけている。

SNSなどで広がっている「食べると、がんに効果がある」という情報に根拠はあるのか? ビワの種を原料とした食品は、基本的には食べない方がいいのか? 農林水産省消費・安全局食品安全政策課の担当者に話を聞いた。

――アミグダリンが「がんに効果がある」という情報は有名?

SNSの一部で投稿されているのは承知しています。

――「ビワの種を粉末にした食品」に関する問い合わせは、いつ頃から農水省に届いている?

確認できた範囲では、2017年12月ごろから消費・安全局食品安全政策課に、お問い合わせが来ています。

――「ビワの種の粉末は食べないようにしましょう」という注意喚起をHPに初めて掲載したのはいつ?

2017年11月6日に厚生労働省が発出した事務連絡(シアン化合物含有食品の取扱い)をきっかけとして、農林水産省としても消費者に注意喚起するために、この年の12月にHPに掲載しました。

「科学的に十分な根拠はありません」
――ビワの種の粉末を食べてはいけない理由は?

ビワなどのバラ科植物の種子や未熟な果実の部分には、アミグダリンという青酸を含む天然の有害物質(総称して、「シアン化合物」と言います)が多く含まれています。

一方で、熟した果肉に含まれるシアン化合物は、ごくわずかです。果実を未熟な状態で食べてしまったり、果実を種子ごと食べてしまったりすることは、まれですので、通常、果実を食べることによる健康影響は無視できます。

しかし、種子を乾燥して粉末に加工などした食品の場合は、シアン化合物を一度に大量に食べてしまう危険性が高まりますので、ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう。

高濃度のシアン化合物が検出されて回収が行われている「ビワの種子粉末食品」のうち、特に濃度が高いものでは、小さじ1杯程度の摂取量でも、健康に悪影響がないとされる量を超えて、青酸を摂取してしまう可能性があります。

――ビワの種の粉末を「食べると、がんに効果がある」という情報に根拠はあるのか?

インターネットや書籍の情報では、ビワの種子に含まれるアミグダリンを「ビタミンの一種」と称したり、「がんに効果がある」とうたったりして、健康に良い成分としているものがあります。

しかし、アミグダリンをビタミンとする説は現在では明確に否定されています。また、アミグダリンの有効性に関する情報については科学的に十分な根拠はありません。

むしろ、アミグダリンから体内で青酸ができる可能性があるため、健康への悪影響が懸念されています。実際に、海外では、アミグダリンを含む、生のアンズの種子を体に良いとして、大量に食べたことによる健康被害や死亡例が、複数、報告されています。

――ビワの種を原料とした食品は、基本的には食べない方がいい?

現在、農林水産省は、都道府県や関係団体を通じ、ビワの種子を原料とする食品の製造者や関係者に対し、自主検査を行い、安全な食品を提供するよう指導しています。