誰でも一度は見たことがあると思われる、所在なさげに落ちている片手袋。どうして片方だけなのか? 人はなぜ片方だけ落としてしまうのか?

 謎を検証すべく、2005年から片手袋の研究・考察を始め、著書『片手袋研究入門 小さな落としものから読み解く都市と人』(実業之日本社刊)も上梓した石井公二さんにお話を聞きました。

片手袋が落ちている場所の特徴
 そもそも手袋が片方だけ落ちていることに、法則のようなものはあるのか? 石井さんによると、落ちている場所には大きく分けて2パターンあるといいます。

「ひとつは『落としやすい場所』。例えば切符の券売機やバス停の周辺、スーパーマーケットのレジまわりなど、お金の出し入れをする場所がそうです。冬場に手袋を外して財布の中身を取り出そうとしているうちに忘れちゃう……とかですね。あとは、駐車場で車から外に出るときのように、温度が変わる場所でも落としやすいです」

 横断歩道で信号待ちをしていて、手袋を脱いでスマホをチェックする際に落とすケースも多いそう。

「手袋を落とす要因としてスマホが占める割合は増えたと思います」

https://fumu.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/750wm/img_bdb8e23060a8906886666ea93c71e2751648801.jpg
自販機や切符の券売機など、財布からお金を出し入れする場所に片手袋は存在しがち 写真提供/石井公二さん

 そして落ちている場所のもうひとつのパターンは、「落ちた手袋がとどまりやすい場所」。

「落とした場所と見つかる場所が違う場合もあります。落とした場所にずっとあるわけではなく、階段の段差や排水溝など、風で吹かれたり雨で流されたりなどして、落とした場所から離れてとどまることもあります」

https://fumu.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/750wm/img_b32e87c59cdc178157021a1f7105e8101475935.jpg
階段の段差の片手袋も、もしかしたら落とした場所とは違う可能性もあるそう 撮影/fumufumu news編集部

深さ数千メートルの海底で見つかることも
 これまでに5000種もの片手袋の写真を撮ってきたという石井さんは、片手袋をチャート式に3段階に分類し、体系化しています。

 第1段階では、軍手やゴム手袋などの作業用、ファッション用、子ども用など、使用する「目的」別で分け、第2段階の「過程」では、落ちたままの「放置型」と、誰かに拾われて目立つ場所に移動する「介入型」に大きく分けることができるといいます。

「介入型でいえば、ガードレールに挿してあったり、フェンスに引っかけてあったりするのがそうです。落とし物ではあるのですが、厳密に言うと“落とした手袋を誰かが拾ってあげた”となります」

https://fumu.ismcdn.jp/mwimgs/5/7/750wm/img_57f2e26a08c6b14c346c39bbb84a9b1e1331846.jpg
左・「介入型」の典型例ともいえる、三角コーンに刺さった片手袋。右・片手袋発生率がもっとも高いという高速道路 写真提供/石井公二さん

 そして第3段階では「状況・場所」に分類。ゴミ捨て場や、工事現場や倉庫といった作業地帯で軍手が片方だけ落ちているというのは想像しやすいと思いますが、「都心から離れた幹線道路や高速道路なども、運送用のトラックが走る関係で特に多いですし、数千メートルの海底で見つかったりもしています」

 ちなみに、落とし物として警察に手袋が届けられる件数も、年間何万枚にもなるとか。