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ソウル市トボン区の廃棄物処理施設で処理される生ゴミ。食品廃棄物の大半は、動物の飼料、肥料、暖房用の燃料に活用されている=2023年5月、Chang W. Lee/©The New York Times

世界中で廃棄される食品の量は毎年14億トンにのぼるが、大半は埋め立て地に送られている。それが腐ると、水や土壌が汚染され、最も強力な温室効果ガスの一つであるメタンが大量に発生する。

しかし、韓国ではそうではない。約20年前に埋め立て地への生ゴミの廃棄を禁止した。韓国では生ゴミの大部分が動物の飼料、肥料、家庭の暖房用燃料に転換されるのだ。

食品の廃棄は気候変動の最大の原因の一つである。メタンだけでなく、食品の生産や輸送に費やされるエネルギーと資源もまた浪費されるからだ。

埋め立て地や焼却場に送られるはずの食品廃棄物の90%を廃棄物にしない韓国のシステムは、世界各地の政府が研究対象にしてきた。中国やデンマークその他の国々の当局者が韓国の施設の視察に来ている。ニューヨーク市は来秋までに、全住民に食品廃棄物と他のゴミとの分別を義務付ける。ニューヨーク市衛生局の広報担当者によると、同市は韓国のシステムを長年にわたって研究してきた。

(世界の)多くの都市が韓国のシステムに相当するプログラムを実施しているが、韓国のように国家規模で実施している国は、仮にあるとしても、きわめて少ない。経費が高くつくからだと、二酸化炭素の排出削減を研究している「Project Drawdown(プロジェクト・ドローダウン、削減計画)」のシニアサイエンティスト(上級科学者)ポール・ウェストは言う。個人や企業は食品廃棄物の処理に少額の経費を支出しているだけだが、韓国の環境省によると、同国はプログラムに年間約6億ドルを投入している。

それでも、ウェストやその他の専門家らは韓国のシステムを見習うべきだと言っている。「韓国の先例は、より大規模な排出削減を可能にする」とウェストは言うのだ。

韓国の食文化の伝統では、食べ残しが出る傾向がある。おおかたの食事では、小皿に入った副菜が数品、場合によっては十数品も添えられる。実際のところ、そうした残り物は長年、すべて地中に埋められていた。

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