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東京新聞の望月衣塑子記者(写真=本人提供)

 自民党離れが加速している。朝日新聞が7月15、16日に行った調査では、これまで30%台をキープしていた政党支持率が、ついに28%に。特に女性の支持の落ち込みが著しく、6月の調査での33%から24%に急落した。内閣支持率も報道各社の調査で軒並み下がるなか、岸田首相は「(支持率は)いずれ上がる」と発言し、どこ吹く風。東京新聞の記者として、政治の問題に切り込み、発信を続ける望月衣塑子氏は、国民の「自民離れ」「岸田離れ」をどう見るのか。

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――自民党が、特に女性からの支持を失っている原因は何だと思いますか?

 女性は生活に関わる問題に敏感だからだと思います。首相が安倍さんから岸田さんになって、もうちょっとまともな暮らしになればいいなと思っていたのに、豊かになっている実感が持てない。今夏のボーナスの平均支給額は過去最高になりましたが、大企業に勤めている人以外にも恩恵が行きわたっているかは怪しいし、そもそも給料が上がる以上に物価や光熱費が上がっているから、実質賃金はマイナスです。

 前の安倍政権と比べて、状況が好転したこともあります。韓国との関係が改善したり、メディアへの圧力がなくなったり。でも人々は目の前の暮らしに必死で、そんな細かいところまで見ませんよ。むしろ、今の政府は国民の生活を守ることを後回しにしてばかりで、女性たちが「こんなんじゃ幸せにはなれない」って肌感覚で思うのも当然だと思います。

――「国民の生活を守ることを後回し」とは、具体的に?

 少子化対策がいい例ですよね。「異次元の」とは言ってみても、財源をどう確保するのかも決まっていなければ、改革の内容も今までの政策に毛が生えたようなもの。子どもの人数に応じて大幅に減税するフランスのように、政府の本気を見せないと、合計特殊出生率が1.26しかない現状は改善しないと思います。

 マイナ保険証の問題だってそうです。役所の手違いによって、病歴とか健康診断結果のような命に関わる個人情報が、赤の他人に筒抜けになる事態が多発している。政府が「来年秋には今の健康保険証を廃止する」なんて無理なスケジュールを打ち出した結果、約6000人分のデータを職員5人が手作業で入力するという悲惨な事態に陥っている自治体があります。起きるべくして起きているミスという印象ですね。

(デジタル大臣の)河野さんが「自分自身を処分します」などと宣言してパフォーマンスしたところで、トラブルは今も相次いでいます。岸田さんは最初、総裁選での宿敵だった河野さんを、いずれ問題が噴出するであろうデジタル庁にわざと置いたのかもしれませんけど、今の支持率を見ると、河野さんに責任をなすりつけることには失敗していますね。

■岸田首相が重視しているもの

――岸田政権が、国民の生活よりも重視していることとは?

 軍拡です。岸田さんの一見マイルドな感じに期待していた女性たちは、がっかりしていると思いますよ。安全保障や経済成長のための先端技術支援に年間5000億円規模で税金を出資すると提言したり、防衛産業において経営が苦しい企業があれば、その設備を税金で“国有化”して支援する法律を通したり。