日本からは見えにくい韓国社会の根底と新しいステージに入った「日韓関係2・0」の構造の中で、韓国社会の中で存在感を高める10代、20代の知られざる素顔とは。『日韓の決断』(日経プレミアシリーズ)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

試験に出る反日教育
韓国には若者を指す様々な呼称がある。10~20代の「1020世代」。1990年代後半から2010年代初めに生まれた「Z世代」または「MZ世代」。特に20代は男子が「イデナム」、女性は「イデニョ」とそれぞれ頭文字をつなぎ合わせて呼ばれることは先に説明した。

19年9月、公益財団法人「日韓文化交流基金」による青少年交流事業(外務省招へい)で来日した韓国人大学生30人と懇談する機会をもった。最近の日韓関係について説明を終えると、待ってましたとばかりに手を次々に挙げた学生からの猛烈な質問攻めにあった。

日韓の歴史問題が多かったのは予想通りだが、1951年に署名されたサンフランシスコ平和条約から元慰安婦・元徴用工問題まで、その知識量と問題意識に感心した。同時に、テーマによっては「韓国史観」とも言える韓国側の主張に偏った考え方に危うさも抱いた。

それはある意味で仕方ないかもしれない。幼い頃から教育などによってそのように刷りこまれてきたのだから。

「日本との歴史になぜそれほど熱心なの?」とあえて聞いてみた。すると、ある学生は「日本との歴史は義務的に覚えなければならない。(韓国が併合された)1910年前後の歴史は特に試験によく出るから」と答えた。

テストによく出る時代は「韓国併合前後」
超学歴社会の韓国は日本以上の激烈な受験戦争で知られる。出題の答えは当然1つしかないので、子どもたちは授業で教わった「正答」を必死になって覚える。

別の韓国人学生によると「小学校から高校まで歴史教育を受ける。学校の外でも日本との歴史に接したり、学んだりする機会がたくさんある」という。

元慰安婦支援団体が毎週水曜日にソウルの日本大使館前で開く日本政府への抗議集会には高校生も参加する。韓国の大学入試には授業以外の自発的な活動実績が加算点になる試験方式があり、文在寅政権時代には「反日運動」への参加をアピールする志願者が増えたという。

「日帝」(日本帝国主義)時代の日本の「悪行」が子どもたちにインプットされる場は歴史教育にとどまらない。国語や道徳、音楽など他の科目でも授業を通して徹底的に教え込まれる。ある韓国人大学生は「教科書に日本を非難する直接的な記述がなくても、日本が悪かったように授業の中で先生が誘導していた」と打ち明ける。

ソウルには、日本統治時代に独立運動家が投獄された西大門刑務所跡地など当時の建築物が残存している。同国で「義士」と呼ばれる独立運動家の銅像もあちこちで目に入る。

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