江戸時代に紀州藩が領内の村役人に「ワニ」を探すよう求めた通達が三重県で見つかった。「捕獲したら塩漬けにして送ってほしい」とも書かれているが、なぜワニを求めていたのかは不明だ。

https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/09/20230906-OYT1I50163-1.jpg?type=large
参考資料として展示されている江戸時代の百科事典「和漢三才図会」(1712年刊)のワニ

 通達は明和7年(1770年)、税金を徴収する藩の出先機関「二分口役所」から、現在の同県尾鷲、熊野市と紀北町の役人に出された。通達では、「わにと 申魚もうすさかな 」として、「形はイモリに似て」「腹は蛇腹」「四足で足には四本の爪がある」などの特徴が記されている。

 当初の回答は「漁師たちも見たことがない」などだったが、後の文書で「見つけたら、すべてを投げ出してでも逃げ去るため、姿を完全に見た者はいない」との記述もあった。

https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/09/20230906-OYT1I50162-1.jpg?type=large
「わにと申魚」としてワニの特徴を挙げる文書

 一連の古文書は、尾鷲市教育委員会の学芸員、脇田大輔さん(34)が昨年、市所蔵の古文書を調べた際に見つけた。「一部のサメをワニと呼ぶ漁師がいたのかもしれないが、なぜ紀州藩がワニを求めていたのか、自由に想像してほしい」と話している。古文書は今月末まで同市立中央公民館で展示されている。

 同県総合博物館によると、同県亀山市で300万~400万年前の地層からワニの化石が見つかっている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230906-OYT1T50236/