「もっとちゃんと考えて」そう言われたことがある人は少なくないだろう。しかし、なんとなく考えただけでは、いつまでたっても「ちゃんと考えた」ことにはならない。では、どうすれば思考の質を高め、“頭のいい人”になることができるのか? 20年以上にわたって、3000社もの企業のコンサルティングに従事してきた安達裕哉氏が伝授する、頭のいい人になるための“黄金法則”とは。45万部を突破し、2023年の年間ベストセラー1位に輝いた『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)より、一部を抜粋・再編集して紹介する。#1

話が浅くなってしまう3つの理由とは?
“話が浅い人”の特徴は3つあります。

1 根拠が薄い
2 言葉の「意味・定義」をよく考えずに使う
3 成り立ちを知らない

これらの特徴に当てはまると、聞く側は「この人の話、浅いな」と感じてしまいます。しかし、これは決して他人ごとではなく、だれでもついついやってしまう話し方でもあります。だからこそ、これらのポイントに意識的になることが重要なのです。

ただし、注意していただきたいのは、話題やテーマで話の「深さ・浅さ」が決まるわけではない、ということです。

たとえば、政治の話をしても浅い人はいます。流行りのアイドルやアニメの話でも、深いなと感じさせる人はいます。

タレントのタモリ氏が「日本坂道学会」(自称)という学会を設立していると知り、著書『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』を読んでみました。この本のまえがきは、タモリ氏が東京に初めて来たとき、なんと坂道の多い所だと感じたこと、生まれ育った家が長い坂道の途中になったことに触れ、こう続きます。

人間の思考、思想は、要約すると傾斜の思想と平地の思想に大別することができる。平地の思考のそれはハイデッガーである。

“坂”ひとつでこれほどの話ができる人がいるというのは驚きでした。これを聞いたある作家が、「傾斜について対談がしたい」と申し入れたほどだそうです。

もちろん哲学の話をすればいいわけではありません。哲学にしろ、坂にしろ、アイドルにしろ、どう掘り下げるかが肝心なのです。

思い込みが強いと頭が悪く見える
話が浅くなる理由は“認知バイアス”と大きく関係します。

バイアスとは「かさ上げ・偏り・歪み」を指す言葉で、「認知バイアスとは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉として使用される」と情報文化研究所所長の高橋昌一郎氏は述べています。

認知バイアスが、つまり偏見や先入観や思い込みが強いと、頭のいい人には、話が浅く聞こえてしまい、“ちゃんと考えてた?”という心証を持たれてしまいます。

頭のいい人は、物事をできるだけ正確に、客観的にとらえようとします。極力、バイアスに意識的であろうとするのです。認知バイアスは、だれでも持っています。だからこそ、バイアスに少し意識的になるだけで“ちゃんと考えている人”になることができます。

とはいえ、認知バイアスの種類はたくさんありますので、ここでは話す前に注意してほしいものをふたつ紹介します。

話す前に注意すべきこと①  確証バイアス~人間は見たい世界しか見ない~
確証バイアスとは、自分の都合のいい情報ばかり集めて、自分にとって都合の悪い情報は無視する傾向のことです。人間は見たい世界しか見ないのです。

たとえば、だれかのことを“あの人は胡散臭い”と思ったとしましょう。そうすると、その人の胡散臭いようなしぐさや、言動ばかりが目についてしまうことがあります。これも確証バイアスによるものです。

人間は、自分の直感を正しいと思いたい生き物です。そのほうがラクだからです。それゆえ、直感が正しいとする情報を脳が勝手に集め、逆に直感に合わない情報はスルーするようになっているのです。