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我が国では「ザリガニ」と聞くと川や池にいるものを推測しますが、実は海に生息するものも存在します。そしてその中には、高級魚介類として珍重されているものもあります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

海の手長エビ『アカザエビ』
突然ですが「手長エビ」と聞くとどんな生き物を連想されるでしょうか。おそらく少なからぬ人が「川や湖にいる、ハサミの長いエビ」と答えるのではないかと思います。

しかし料理人、とくにフレンチやイタリアンのシェフの多くは、きっとそうは考えないでしょう。彼らが連想するのは朱色の鎧のような殻に覆われた、厳つくて長いハサミを持った海産のエビのはずです。

彼らが「ラングスティーヌ」あるいは「スカンピ」と呼ぶそのエビは、アカザエビという名前の深海性の甲殻類。ソテーや茹でてソースを絡める料理で提供され、西欧では欠かせない高級食材です。深海生物の漁が盛んな我が国ではまとまった水揚げがあり、国内で消費されるのみならず本場フランスやイタリアにも輸出されています。

実は「ザリカニ」?
さてこのアカザエビ、先程より「手長エビ」と書いていますが、厳密に言うとこの甲殻類は手長「エビ」ではありません。というのも、我が国で一般的にエビと呼ばれる生物は十脚目イセエビ下目ないしはコエビ下目、根鰓亜目に含まれているのに対し、このアカザエビは「ザリガニ下目」に含まれるからです。

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アカザエビのグリル(提供:PhotoAC)

ザリガニ下目に含まれる生き物にはアメリカザリガニのほかウチダザリガニ、そしてロブスターとして知られるアメリカウミザリガニなどが含まれます。いずれも一般的にザリガニと呼ばれている者たちです。

このことからも分かる通り、アカザエビは分類学上は「ザリガニの仲間」なのです。

そもそもザリガニとは……?
といっても、一般的にザリガニの特徴といえば「カニのように大きなハサミ」であり、アカザエビのそれがカニの様かというと疑問に思う人も多いかもしれません。感覚としてはやはり「手長エビ」と呼ぶのがしっくり来ます。

そもそもの話をしてしまうと、「ザリガニ」はザリガニ下目に含まれるものの総称であり定義としてははっきりしていますが、「エビ」は前記の通りいくつかの下目に含まれる生物の総称であり、定義としてはっきりしているとは言い難いです。

したがって「アカザエビはザリガニだからエビではない」というのは非常に恣意的な考え方でもあり、独りよがりな認識と言えるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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