0275 名無し草 2021/10/24 15:29:26
片想い伏(14)×五(27)

その日、俺と五条さんは稽古を終え俺のアパートにいた。汗ひとつかいていないこの人に比べ全身汗だくだった俺はすぐにシャワーを浴び着替えた。居間に戻ると五条さんが壁に寄りかかってうたた寝をしている。少しの好奇心、俺は静かに近付いて寝顔を覗き込んだ。サングラスを外し眠っている彼の整った顔は普段よりも幼く見える。彼の寝息と自分の心臓の鼓動がよく響いた。
俺はこの人に片想いをしている。自覚したのはいつだっただろうか。中学に上がる前にはもうこの人をそういう目で見ていたかもしれない。2年前の夏、彼を抱く夢を見て精通をした。ショックを受けた気持ちが少しと、やっぱりなという気持ちが大半。この気持ちは絶対に気付かれてはいけないと思った。
「ん…」軽く身じろぎした五条さんに俺の肩がピクリと跳ねる。息を潜めてもう一度顔を窺うと、彼はまだ起きてはいないようだった。少しだけ…と欲が出る。俺はゆっくりと顔を近づけ、彼の唇に己のものを重ねた。五条さんの唇は想像よりも遥かに柔らかかった。心臓が早鐘を打ち、この大きな音が彼に聞こえないか心配した。起きていないか目だけでチラリと確認する。彼はまだ眠っていた。俺はゆっくりと唇を離し、彼の肩に顔を埋めた。
「…好きです、アンタが。アンタのことめちゃくちゃにする夢を見るんです。」
「…まじでムカつく、なんでアンタなんか。趣味わりーな俺」
「…アンタは俺のことなんてなんともないんでしょうけど」
彼が寝ているのをいいことに、一気に胸の内を吐き出した。この人が好きで、好きで…心底ムカつくくらい好きだ。この人にとって俺はいつまで経ってもガキのままでーーまあ実際まだガキなんだが、この気持ちはどうやっても彼に届くことは無いんだろうと思うと虚しくなった。そんなことを思いながら顔を上げると。

そこには目を開けてこちらを見つめる五条さんがいた。


おわり;;