「神?」
イブールは席を蹴り、怒ったように歩き回った。
「なんと。おまえはまだ神を信じているのか?……バカめ!いいか、これまでに世界中に起こったことがらは、
すべて、神の責任、神の筋書きどおりなのだぞ。いちど、落ち着いて考えてみろ!神は世を三つに分けた。
天界と地上、そして魔界だ。天界をはみだしたものは地上に堕ち、地上を追い払われたものは魔界に満ちる
というわけだ。おかげで天界はきれいさっぱりかたづいたが、地上ときたらこのとおり、さらに魔界は?
暗黒の魔界はどうなった?」
イブールは盃に酒を注いだ。どぶどぶと、溢れるままに。
「……こうだ!いずれこうなることは、わかりきっているじゃないか。全知全能の神ともあろうものがそのぐらい
のことを考えなかったはずがない!」