https://www.jiji.com/jc/article?k=2021102201077
2021年10月23日07時12分




 電力供給や資源について政府の中長期的な方針を示す「エネルギー基本計画」が、岸田文雄政権下で初めて策定された。原発について「可能な限り依存度を低減する」との方針が維持される一方、「必要な規模を持続的に活用する」との文言も追加されて方向感が定まらない。一部の産業界や自民党議員らが求めていた新設や建て替えを進める方針は、盛り込まないことで決着した。
 新計画では、国際公約となった2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向け、同年度の電源構成に占める原発比率を20〜22%に据え置いた。実現には、原子力規制委員会に再稼働を申請済みの全27基の運転が必要だが、現状は10基にとどまる。東京電力福島第1原発事故で国民に刻み込まれた原発への不信感は事故後10年を経ても強く、難航が予想される。
 被爆地・広島が地元の岸田首相が今後、原発利用と温室ガス削減をめぐって難しいかじ取りを迫られるのは必至で、エネルギー政策での手腕が問われることになりそうだ。
 法律上の運転期限を迎える原発が増えていく中、3年後をめどとするエネ計画の次回改定時に、改めて新設や建て替えをめぐる議論が起きる可能性が高い。電力業界からは「脱炭素社会の実現に向けて原発利用は必須だ。まずは安全利用を進め、国民の信頼を積み上げるしかない」(大手幹部)との声が上がる。
 また新エネ計画には、前計画と同様、原発事故が起きた場合に「国は関係法令に基づき、責任を持って対処する」との文言も盛り込まれた。7月に示した改定案には盛り込まれていなかったが、意見募集を経て改めて明記した。