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2021年10月23日20時35分

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【図解】ブータン




 【ニューデリー時事】ヒマラヤの王国ブータンが、中国と国境画定に向け覚書を交わした。軍事・外交面でインドの強い影響下にあるブータンへの中国の接近に、インドは神経をとがらせている。
 中国とブータンは、1984年以降24回にわたって国境画定に関する交渉を実施。今月14日に締結された覚書の詳細は、3段階の行程を定めたという以外明らかにされていないが、ブータン紙クエンセルは「交渉の新たな推進力となるだろう」と強調するブータン外務省の声明を伝えた。両国国境は約500キロで、中国は全体が未画定と主張している。
 中国とブータンの間に外交関係がない現状は変わらないものの、インドでは懸念する声が相次いで上がった。インドの元駐中国大使ビジェイ・ナンビア氏は20日、インターネットを通じ開催された講演会で、中国が交渉を通じ、中印ブータンの3カ国国境地帯の軍事的要衝をブータンから獲得し、インド領に肉薄しようと意図している可能性があると警鐘を鳴らした。
 中印両軍は2017年、3カ国国境地帯にある「ドクラム(中国名・洞朗)」高地で道路建設をめぐり約2カ月間にらみ合った。昨年には中国がブータン東部の「サクテン野生生物保護区」の領有権を突然主張。保護区の東隣はインド実効支配下のアルナチャルプラデシュ州で、中国がやはり領有を唱えてきたことから、中印間の緊張が高まった。
 インドは「南アジアの盟主」を自任する。しかし近年は中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の下、インド周辺国への浸透を図る。インドは、ブータンが新たな「切り崩し」の対象になりかねないとみて警戒を強めている。