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毎日新聞 2021/10/24 12:00(最終更新 10/24 12:00) 有料記事 4840文字




 投開票日(31日)に向けて選挙戦まっただ中の衆院選。気になるのは投票率で、近年は半数近い有権者が1票を投じない。五野井郁夫・高千穂大教授は、好きな食べ物やアイドルなど「推し」を選ぶように、投票先を考えようと呼びかける。なぜ、有権者がしらけがちになるのか、日本の選挙の問題はどこにあるのか。「へえ〜」と思う先進国のトレンドも紹介しながら「選挙になんて興味がない」人に向けて、わかりやすく語ってもらった。【聞き手・鈴木英生】

私たちは既に政治を動かしている
 ――前回衆院選は、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられて初の衆院選でしたが、18、19歳の投票率は40.49%に過ぎませんでした。「選挙は難しそう」とか「どの政党に入れても結果は同じ」などと言う人が珍しくありません。

 ◆でも、私たちは誰もが、趣味や食べ物などの好みを決めるときには、とても繊細な取捨選択を大真面目にしていますよね。「どのアイドルのこの表情がいい」とか、「このアニメの作画はここがきれい」とか、「このラーメンのスープは何のだしで」とか……。同じように投票先を選んだら、きっと楽しくなります。アイドルやアニメなどの好みを指す若者言葉で言い換えると、自分の「推し」の政党や政治家を見つけてほしいと思います。

 ――「そこまでやるのは面倒」と思う人が多いのでは……。

 ◆「自分と政治は関係ない」「投票なんかしても何も変えられない」と思うからですよね。政治学の用語で言えば、「政治的有効性感覚」が低いということです。でも実は、そう思う人たちを含む多くの人の声が、結果として日々、政治を動かしています。記憶に新しい例では、新型コロナウイルス禍に伴う10万円の給付金でしょう。いったんは、「お肉券」「お魚券」を配布する方向にもなりかけましたが、「そんなのじゃダメだ!」という空気が強まり、政治が動いた。高校無償化も世論が実現させました。大学の一部無償化も始まりました。大学の完全無償化や、多くの人が返済に苦しむ奨学金の「徳政令」(帳消し)だって、世論が盛り上げれば不可能ではないと思います。



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