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毎日新聞 2021/10/25 07:00(最終更新 10/25 07:00) 有料記事 2214文字




 「ゾンビを倒して結婚する」。そう思い込んだ末に金属バットと包丁を持って自宅を飛び出した男性は、約400メートル離れた神社で逮捕された。神戸市北区で4年前、家族ら5人を殺傷したとして殺人罪などに問われた竹島叶実(かなみ)被告(30)。神戸地裁の裁判員裁判では刑事責任能力の有無が争点になっている。精神鑑定した医師2人の見解は割れ、うち1人が新型コロナウイルスの影響で出廷できない事態に。異例の公判で裁判員は難しい判断を迫られる。

 2017年7月。事件は静かな山あいの住宅街で起きた。起訴状や公判での証拠によると経緯はこうだ。

 一軒家に祖父母、母と4人暮らしだった竹島被告は7月16日早朝、金属バットや包丁で祖父(当時83歳)と祖母(同)を殺害。止めに入った母(57)にも重傷を負わせた。さらに自宅を出て近くの民家にいた女性(当時79歳)を襲い殺害。別の小屋にいた女性(69)にも重傷を負わせた。

 住民の通報で駆け付けた警察官に声をかけられると、竹島被告は金属バットや包丁を捨てて神社へ逃走。鳥居をくぐった直後、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された。通報から15分後、午前6時34分だった。警察署へ連行されるパトカーの車内で「大変なことをしてしまった」と語ったという。

 ところが、竹島被告が取り調べに説明した経緯は荒唐無稽(むけい)だった。

 事件の4日前。インターネットの掲示板で株式投資に関する投稿を見た竹島被告は、「13」という数字から高専時代に同級生だった女性を連想した。13は女性の出席番号だった。…

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