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2021年10月25日18時40分

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街頭演説する岸田文雄首相=25日午後、京都市役所前




 参院静岡選挙区補欠選挙の自民党敗北は、政権に対する有権者の不信が根深いことを浮き彫りにした。岸田文雄首相(党総裁)は戦略の練り直しを急ぐが、31日の衆院選投開票まで1週間を切り、局面打開の妙手は見当たらない。野党は躍進の好機とみて、終盤戦へ追い込みを掛ける。


 「県民の判断を厳粛に受け止める」。首相は補選から一夜明けた25日朝、遊説出発前に東京都内で記者団にこう表明。「気持ちを引き締めて政権選択の衆院選に努力を続ける」と語った。
 静岡補選は自民現職の辞職に伴う。岸田政権発足後初の国政選挙で確実に議席を守り、1週間後の衆院選につなげる算段だった。首相は告示日の7日、JR静岡駅前で「『岸田に任せる』という意思をいただきたい」と強調。21日に再び応援に入ったほか、甘利明幹事長らを投入して総力戦で臨んだが、結果は約5万票差で敗れた。
 野党側は、立憲民主、国民民主両党が推薦し、勝利した無所属新人を川勝平太知事が全面支援した。与党にはこれを理由に「衆院選とは別物」(閣僚経験者)と影響を否定する声もある。ただ、共産党新人も約11万票を得ており、単純に足せば与党は「大敗」となる。野党は衆院選で、289小選挙区のうち213で候補を一本化した。
 時事通信の出口調査では、無党派層の約6割が無所属新人に、1割が共産党新人に投票した。無党派層の動向は勝敗を左右する。自民党ベテランは「安倍、菅両政権に対する不満は消えていない。衆院選も同じ傾向になる」と指摘。党関係者は「ちょっとしたことで雪崩が起きかねない」と警戒感をあらわにした。
 首相は25日夜、党本部で甘利氏や遠藤利明選対委員長らと会談し、衆院選終盤の戦略について協議する。ただ、党幹部は会談に先立ち「接戦区に力を入れていくしかない」と述べた。
 一方、立民の枝野幸男代表は高松市で記者団に「自公政権への不信と不満は依然として大きい。衆院選へ勇気づけられる結果だ」と強調。国民の玉木雄一郎代表は都内で記者団に「衆院選に向けて弾みになる」と語った。
 共産党の志位和夫委員長は都内で記者団に、衆院選での共闘に触れ「野党勝利の可能性を広げた」と意気込む。立民幹部は「勝ち馬に乗ろうとする『バンドワゴン効果』が出るかもしれない」との見方を示し、支持拡大に全力を挙げる考えを示した。