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毎日新聞 2021/10/26 19:51(最終更新 10/26 21:35) 609文字




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京都大霊長類研究所の改編計画を発表する湊長博学長(左)ら=京都市左京区で2021年10月26日午後5時28分、千葉紀和撮影

 京都大は26日、研究資金の不正支出が問題化した霊長類研究所(愛知県犬山市)を、2022年4月に「ヒト行動進化研究センター(仮称)」に改編する計画を発表した。学内の中核的組織である「付置研究所」の位置付けから外し、1967年の発足から国内外の霊長類研究をリードしてきた研究所の名称が姿を消す。

 霊長類研が持つ10の研究分野も統廃合する。脳科学系3分野を残し、野外研究中心の4分野は総合博物館など既存の学内組織と統合。思考言語、認知学習など3分野は廃止する。複数の部局による運営を進め、研究員は所属を変えるなどして従来の研究を続ける。約1150頭いるサル類の飼育も続けるが、24年度に抜本的な組織再編を図る方針。



 湊長博学長は同日の記者会見で、再編の理由として不正経理が長期間続いたことを挙げ、「研究所全体の組織の体制や運営にも問題があった」と強調。「閉鎖的な研究所で多くのことをするよりも大学全体で連携し、新しい霊長類学の展開を期待したい」と説明した。

 霊長類研を巡っては、京大が20年6月、チンパンジー飼育施設の工事で架空取引や入札妨害など約5億円の不正支出があったとの報告書を公表。他にも会計検査院が約6億円の不正支出を指摘した。京大は元所長の松沢哲郎元特別教授ら2人を懲戒解雇。廃止される思考言語分野は松沢氏が主宰し、認知学習分野は4本の論文捏造(ねつぞう)が認定された正高信男氏が教授を務めていた。【千葉紀和】