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毎日新聞 2021/11/3 19:37(最終更新 11/3 20:04) 991文字




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千葉県市原市の選挙管理委員会から届いた在外投票用紙=田上明日香さん提供

 解散から投票日までが戦後最短となった新型コロナウイルス下の衆院選で、在外投票が間に合わないケースが出た問題を受け、欧米在住の女性3人が、在外インターネット投票の早期実現を求めて署名活動を始める。1万筆を目標にして今週末にもオンライン署名サイトにページを開設する予定だ。

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 「今こうして海外から投票できるのは、過去に運動を起こしてくれた人たちがいたから。今度は自分たちが変える番だと思った」。署名活動の発起人の一人、ドイツ在住のショイマン由美子さん(55)はそう決意を語る。在外投票制度は2000年から始まったが、現行制度実現の裏には署名活動や国家賠償訴訟など、在外邦人による国への地道な働きかけがあった。



 投票権を求める運動が海外で本格化したのは1990年代だ。94年に米国などの市民4団体が約3000人分の署名を衆参両議長に提出。「海外有権者ネットワーク」が組織され、街頭署名運動や国会・関係省庁への陳情、メディアへのアピールなどが続けられた。96年には「海外在住者に投票権を与えないのは違憲」として、ネットワークのメンバーが国賠訴訟を提起。その後、比例代表選挙に限って在外投票ができるようになったが、最高裁は05年にその規定も違憲とする判決を出し、翌年の公職選挙法改正で選挙区の投票も可能になった。

 ただ、現行制度では最高裁判所裁判官の国民審査に投票できないほか、以前から問題視されていた投票手続きの煩雑さなどは解消されておらず、解散から公示日までが戦後最短となった今回の衆院選では、SNSで「投票が間に合わない」などと嘆く声があふれた。国政選挙時のツイッターの投稿内容を分析してきた同ネットワークによると、在外投票に関する投稿数は前回選(17年)の20倍となる6000以上に上っているという。



 ショイマンさんも今回の衆院選で公館投票を利用したが、天候不良で交通機関が乱れ、領事館にたどりつくまでに片道5時間かかるトラブルがあった。「自分の経験もあるが、投票に苦労していたりあきらめてしまったりした人の声をツイッターで多く見て心が動かされ、ネット投票ができたらどんなに助かるだろうかと改めて感じた」と話す。米ニューヨーク在住の子田稚子(こだわかこ)さん(44)も「今が制度を変えるチャンス。署名活動によって世論を動かし、法改正につなげたい」と意気込んでいる。【古川幸奈】