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2021年11月04日07時08分




 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が来年1月1日に発効する見通しとなった。日本が中韓両国と経済連携協定(EPA)を結ぶのは初めて。中国がRCEPのルールを守ることができるかが同国の環太平洋連携協定(TPP)加入交渉入りへの試金石となる。


 9月、中国と台湾は相次いでTPPに加入を申請した。この中、今年のTPP議長国を務める日本の交渉担当者は「中国がRCEP協定を順守できるか見極める必要がある」として特に中国の動向を注視しており、早期にTPP加入交渉に移るのは難しいとみている。
 RCEPは自動車部品や農産品などの関税撤廃、知的財産権の保護や電子商取引に関するルールを定めるなど幅広い分野が対象だ。政府試算では、日本の実質GDP(国内総生産)は2019年度の水準で換算すると約15兆円押し上げられる経済効果が見込まれる。
 農林水産物・食品の関税では、日本が聖域とするコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5項目は輸入時の関税削減対象から外れ、安価な海外農産品の流入を懸念する国内農家に配慮。半面、中国向けのホタテや日本酒、インドネシア向けの牛肉などで段階的な関税撤廃を獲得し、日本が強みを持つ品目で輸出拡大のきっかけとする構えだ。
 一方で、RCEPは工業品を中心に全体の貿易自由化率が91%にとどまるなど、TPPよりも関税やルールの水準が低い。また、TPPのように国有企業の優遇策を制限する条項もないため、中国も参加できた。だが、国有企業の強化を図る中国にとって、TPPへの加入交渉入りはRCEPよりレベルが一段と上がることを意味するため、「今後、多くの例外規定を設けようと関係国に働き掛ける」(経済官庁幹部)との懸念がくすぶっている。